フットボール“新語録”BACK NUMBER
中央突破はサイド攻撃の4倍効率的!?
ドイツ協会が考える戦術のトレンド。
posted2014/11/10 10:40
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph by
Getty Images
「試合中のシステム変更がブラジルW杯のトレンドだった」
(ドイツサッカー協会発行の雑誌『fussball training』)
戦術の潮流を知るうえで、個人的に欠かせない雑誌がある。ドイツサッカー協会が指導者向けに発行している雑誌『fussball training』だ。
その最新号(10月号)において、ブラジルW杯の特集が組まれており、日本代表の強化を考えるうえでもとても有用な情報に溢れていた。今回はその一部を紹介しようと思う。
まず巻頭で特集されたテーマは「試合中のシステム変更」。同誌はブラジルW杯において、柔軟なシステム変更が鍵のひとつだったと分析している。
その代表例としてあげられたのが、ドイツとオランダだ。
ドイツはグループリーグのときは、ラームをアンカーに置く4-3-3を採用していた。しかしアルジェリア戦で右サイドバックのムスタフィが負傷したことを受け、レーブ監督はラームを本職の右サイドバックに戻すことを決断。それに伴いシュバインシュタイガーがアンカーに入り、試合の流れに応じて、4-3-3と4-2-3-1を使い分けるようになった。決勝では前半にクラマーが脳震盪を起こしたためにシュールレを投入し、前者から後者にチェンジした。
4-2-3-1しか手がなかった日本。
一方、オランダがシステム変更をフル活用したのが、決勝トーナメント1回戦のメキシコ戦だった。3-5-2でスタートするも、メキシコに先制されると、カイトを左サイドハーフから右サイドバックに移して4-2-3-1に。後半30分をすぎるとさらにリスクを冒して、2-3-3-2を採用した(カイトとフンテラールの2トップ)。このセカンドボールを狙うパワープレーが当たって、オランダは逆転に成功した。
ザッケローニ監督は、当初は3-4-3に取り組みながらも最終的には断念し、本大会では4-2-3-1しか手がなかった。コートジボワール戦でリードを許してからの時間帯や、ギリシャ戦で相手に退場者が出てからの時間帯に日本は攻めあぐねてしまった。
もし日本も、ドイツやオランダのように(場当たり的ではなく)訓練されたシステム変更ができれば……。タラレバになってしまうが、他のオプションを作らなかったことが悔やまれる。