ブラジルW杯通信BACK NUMBER
63%の支配率と、五分五分の決定機。
8強のドイツが晒した「大きな課題」。
text by
了戒美子Yoshiko Ryokai
photograph byGetty Images
posted2014/07/01 16:30
延長前半2分、アルジェリアとの死闘を一歩抜け出すゴールを決めたシュールレ。満身創痍のドイツを救う一発だった。
支配率はドイツ、しかしアルジェリアは果敢に攻め立てた。
始まってみると、試合展開は完全に五分五分。ボール支配率こそ63%対37%とドイツが圧倒したが、アルジェリアのハリルホジッチ監督はドイツの弱点である両サイドバックの裏を徹底的につき、そこからのクロスで攻め立てた。
所属のシャルケでは主にCBか右SBでプレーするヘベデスは左サイドでの対応に弱く、ムスタフィの右サイドは連携が完全ではない。そもそも、ムスタフィは高い位置を取って攻めるというチームの狙いを事前に把握していたとは思えない出来だった。
ドイツが最初にひやっとしたのは、9分にアルジェリアのスリマニがスピードを生かして左サイドを攻略しかけたシーンだったが、これはノイアーが大きく飛び出して対応した。14分には逆サイドからフェグーリがドリブルで攻め込んでシュート。17分には左クロスに走り込んだスリマニが頭であわせたが、これはオフサイドの判定に救われた。
フンメルス不在は攻撃面にも影響が。
一方、ドイツにもチャンスはあった。41分にはクロースのミドルシュートをGKエムボリが弾き、それにゲッツェがつめた。44分にエジルが放ったミドルシュートは枠の少し上へ。
後半に入り、レーブがゲッツェに代えてシュールレを投入すると、猛攻撃が始まった。55分にはラームがフリーでシュートを放つがGKに弾かれ、79分にもミュラーのクロスがわずかにシュバインシュタイガーに合わず。
惜しいところまでいくものの、ドイツの攻撃がどこか単調に終わったことは、フンメルスの不在を大きく感じさせるものだった。最終ラインがこの日バランスを欠いたのも、両サイドバックの出来だけでなくいつもはラインコントロールを担当する彼の不在が関係しているはずだ。
しかもフンメルスの存在感は守備面にとどまらない。中盤でパス回しが単調になれば、最終ラインから効果的な縦パスを入れて攻撃にリズムを生むのも大きな特長だ。