野球善哉BACK NUMBER
野球界にも指導者ライセンスが必要?
このままでは野球少年がいなくなる!
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2014/01/29 16:30
日本全国で、今日も多くの野球少年が練習に励んでいる。彼らの能力が最大限に伸ばされる指導が行なわれてほしい。
サッカー界の「ライセンス制度」は野球では?
今回の研修に参加した元プロ関係者に話を聞いたが、この研修の中身は「たいして、目新しいものはない」という。プロ・アマの関係や練習試合をするためにはどのような手続きを経る必要があるかなどの規則上の確認だけであって、「一通り話はしておきましたよ」という、問題が起きた時の責任回避の域を出なかったようである。
もっともこのコラムで訴えたいのは、元プロの学生野球資格回復に関する新制度の疑問点ではない。
冒頭で書いた「ライセンス制度」の是非である。
日本プロ野球機構は、この2月にも「NPB公認指導者ライセンス制度」のための講座を実施するが、野球界全体の課題として捉えた時に、ライセンス制度はどうあるべきなのだろうか。
サッカー界と比較して考えてみたい。サッカーには、質問者の指摘のように、コーチングライセンス制度というものが存在する。それもキッズから小学生、それ以上の年代にプロと段階別に分けられている。
日ごろの練習では指導ライセンスの拘束を受けないが、公式戦になると、必ず、ベンチにはライセンス取得者がいなければならない。あるサッカー指導者の話では、この制度があるから「指導者は勉強しなくてはいけないものだ」という認識が一般的に持たれているのだという。
「彼らが教えているのは何なの? 持論なの?」
それと比べれば野球界には、「指導」に関する考え方がないといえる。今現在、プロや大学・高校、中学や小学生の各カテゴリーで展開されている指導法は、指導者個々人の考え方でしかなく、例えば「野球の指導はどうあるべきか」という理念に基づいて、指導がなされているわけではない。
日本ハムの守備走塁コーチを務める白井一幸氏が、以前雑誌『Slugger』の取材の中でこんなことを話していた。
「日本では、選手が現役生活を辞めて、指導者になろうとしたら、簡単になれるんですよ。何の学びもなく、資格もいらない。昨日まで教えられていた選手が、ある時に引退して、教える側に回るということができる。彼らが教えているのは何なの? 持論なの? 経験なの? って疑問だった」
白井氏はそう思って、現役引退後にヤンキースへコーチ留学へと出かけたそうであるが、このタイプの指導者は稀だといっていい。