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<ジョグの原点は狩猟採集時代?> 「Run」と「Jog」の違いを探る。
text by
飯塚真紀子Makiko Iizuka
photograph byGetty Images
posted2013/11/26 06:00
ふたつの単語。これには違いがあるのだろうか?
ランニング大国・アメリカでルーツを探ってみた。
好評発売中の雑誌Number Do『この秋、知っておきたいランのABC』、
ランニング初心者から経験者まで読めばきっと走りたくなる特集から、
走る人々の“分類”を考察した原稿を全文公開します。
サンタモニカの海沿いにあるパリセーズパークではいつも誰かが走っている。ストローラーを押しながら風を切って走る女性、ゴールデン・レトリバーに引っ張られるように走る太った中年男性、“大雨のシャワー”を裸の上半身で浴びながら走る青年。みなが思い思いのスタイルで走っている。
その中に、ずっと気になっている老人がいた。毎夕のように見かける彼は片足を引っ張るように走っていて、それは走るというよりも速く歩いているという動きに近い。それでも、身体は浮くように左右に大きく揺れているのでやはり走っているようには見える。
こういう走り方はランニングと言えるのだろうか? それともジョギング? そもそも、両者に違いはあるのか。
「1km5分」というペースが一つの目安になっている?
あの『BORN TO RUN』にも登場する、旧友“ベアフット・テッド”はこう解釈していた。
「ランニングとジョギングの違いについてはいろいろな意見があって、これと絞るのは難しいんだ。基本的違いはスピードと心構えにあるんじゃないかな。ジョガーはゆっくり走り、コンペなどにはあまり興味がなく、日々のエクササイズのために走っている人が多いように思う」
実際、ジョギングをゆっくりとしたペースで走ることとする定義はよく目にする。とすれば、老人の走りはジョギングということか?
しかし、何をもって、人はそのペースを速い遅いと決めるのだろう。新聞記事やインターネット、SNSを調べると、「1マイル8分(1km5分)」という数字が一つの目安になっているのに気づいた。そして1マイル8分というのは、“ガーミン・デフォルト”だということがわかった。走っている人がよく身につけているガーミンのGPS付き時計の中には、1マイル8分を境に、ランニングからジョギングに表示が切り替わるものがあるという。
しかし、1マイル8分というペース、筆者には絶対無理である。悲しいことだが、永遠に“ランナー”にはなれそうにない。何より、機械ごときに、自分がランナーかジョガーかを決められること自体もっと悲劇だ。