フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
スケートカナダで日本の3人が表彰台。
安定の“銀”鈴木明子、混戦の男子勢。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byREUTERS/AFLO
posted2013/10/28 12:25
エキシビションにも出場した鈴木は、再びの素晴らしい演技で会場を魅了。「グランプリ1戦目としてはいい試合だったと思います。まだ伸びしろもある」と語った鈴木。
「健康だから、スケートを続けてこられた」
「自分のほとんど半分の年齢の選手と戦うことを、どう感じているか」
会見でそう質問が出ると、鈴木は苦笑してこう答えた。
「毎回こういう質問が来る年齢になってしまいました。28歳になって、こうした若い選手と戦っていられるのは光栄なこと。それも病気や怪我がなく健康でいてこそ、続けられたことだと思っています。こういう若い才能ある子たちが出てきて、スケート界の未来は明るいと思う」
鈴木はジュニアから上がったばかりの当時、摂食障害で一時は選手生命も危ぶまれたことがある。そんな思いを乗り越えてきたから、「健康でいてこそ」という言葉がとっさに出てきたのに違いない。
リプニツカヤは、なぜ鈴木を呼び止めたのか?
リプニツカヤにも、「倍の年齢の選手と競うこと」についてコメントが求められたが、「特に何も」という回答だった。
だが会見が終わった後、ロシア語の通訳が私を呼び止めて、鈴木明子に通訳してほしいことがあると言う。横にはリプニツカヤが恥ずかしそうに立っていた。
「アキコのことは選手として、とても尊敬しています。たださっきの質問はまったく予想していないことだったので、なんと答えていいのかわからなかったの」
リプニツカヤは、そのことを鈴木に伝えたくてわざわざ通訳を介して呼び止めたのだった。鈴木は大きな目を一層大きく見開き、「そうですか」と嬉しそうに微笑んだ。
鈴木がソチ五輪の代表に選ばれたなら、おそらくこの「半分の年齢」の選手とも再び戦うことになるだろう。今シーズン限りで引退を表明している彼女だが、こうして長いキャリアを通して、トップレベルを保ちながら戦い続けてきたことを誇りに、美しく最後の戦いに赴いて欲しいと願う。