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震災、原発事故を乗り越えて――。
侍たちが力強く生きる相馬野馬追。 

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島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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photograph byAkihiro Shimada

posted2013/08/02 10:30

震災、原発事故を乗り越えて――。侍たちが力強く生きる相馬野馬追。<Number Web> photograph by Akihiro Shimada

野馬追2日目に行われた甲冑競馬。宵乗り競馬と同じ1000メートルのコースで行われ、8レースに全53騎が出場した。

 鎧兜に身を包んだ数百騎の騎馬武者が、現代の市街地を闊歩する。馬上では、「一言(いちごん)申し上げます!」「承知!」と勇ましい声が飛び交う。

 舞台は、東日本大震災と原発事故で大きな被害を受けた福島県相馬市と南相馬市。復興に向けて力強く生きる侍たちが競演する「相馬野馬追」は、実は、競馬界と非常に密接な関係にある。

 2013年7月27日から29日までの3日間、千年以上の歴史を持つ相馬野馬追が、例年の9割ほどの約430騎の騎馬武者を集めて開催された。この世界最大級の馬の祭りは、国指定の重要無形民俗文化財でもある。旧相馬藩を支配した相馬家の始祖とされる平将門が、下総国葛飾郡小金ヶ原に野生の馬を放して軍事訓練をしたことが始まりと言われている。

 初日は「宵祭り」と呼ばれ、「出陣式」や「総大将お迎え」、雲雀ヶ原祭場地のコースでの「宵乗り競馬」などが行われる。

 2日目は「本祭り」で、「お行列(甲冑行列)」や、雲雀ヶ原祭場地での「甲冑競馬」、「神旗争奪戦」などがある。

 3日目は相馬小高神社で「野馬懸」が行われ、野馬追を締めくくる。

100kgを超える斤量を背負ってレースが行われる。

 初日に行われる宵乗り競馬は、陣羽織と野袴姿の騎馬武者たちにより、1周1000mのダートコースで争われる。JRAで行われている競馬と、それほどスピードの変わらない本格的な競馬である。

 2日目の甲冑競馬の激しさは、そのさらに上を行く。兜を脱いで鉢巻きをした騎馬武者が、鎧を身につけたまま、背中に大きな旗指物を背負ってレースをするのだ。鉄製の大きな鐙や鞍、鎧、そして騎馬武者の体重を合わせると、斤量は優に100kgを超える。そこに旗指物が風を受ける抵抗力が加わるのだから、馬にはスピードだけではなく、相当なパワーが求められる。

 7、8騎の騎馬武者たちが一斉にスタートすると、旗指物が風を切る「バババババーーーッ!」という音が、F1マシンのエンジン音のように響きわたる。それを聴くだけで全身に鳥肌が立つ。「通」の観戦者は、騎馬武者が背負う旗指物の角度を肴にして酒が飲めるのだという。

【次ページ】 活躍できなかった競走馬の受け皿として。

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