濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
19歳の“ツヨカワ格闘家”RENAが、
日本格闘技界の切り札になった日。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byTakeshi Maruyama
posted2010/09/11 08:00
互いに打ち合いとなった決勝戦。RENA(写真左)は高橋藍に対して手を緩めることなく連打し続けた
“死闘”で体現された、格闘技の根源的求心力。
試合は、真正面からの打撃戦となった。遠い間合いから顔面への前蹴りを決め、さらに飛び込んでのパンチ連打を繰り返すRENA。対する高橋はワンツーとヒザ蹴りでRENAの突進を迎撃する。駆け引きはほとんどなかった。とにかく相手より一発でも多く打撃を当てることのみに集中した闘いだ。51kgリミットの試合だが、ふさわしいのは“重量感”という言葉だった。
骨のきしむ音まで聞こえそうな闘いは、規定の3ラウンドでは終わらなかった。延長戦もドロー。ジャッジ3者がRENAを支持したのは再延長ラウンド終了時。彼女にとってこの日の10ラウンド目のことである。
RENAが体現したのは、闘いが持つ根源的な求心力だった。闘争心を前面に出す。泥臭く勝利だけを目指す。リング上に男女の別はなかった。ただ、二人の“格闘家”がいただけだった。つまり、余分なものがないのだ。極端に言えば、技術を理解する必要さえない。闘っている姿さえ見れば、魅力のすべてを理解した気持ちになることができた。そういう存在だからこそ、ファンは日本格闘技界再生の切り札としてRENAに期待を寄せるのである。