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相次ぐ移籍と南ア“後遺症”。
W杯後のJリーグはこう変わる! 

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猪狩真一

猪狩真一Shinichi Igari

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posted2010/07/10 08:00

相次ぐ移籍と南ア“後遺症”。W杯後のJリーグはこう変わる!<Number Web> photograph by KYODO

 さまざまな残像に彩られながら世界最大のサッカーの祭典が幕を閉じると、間を置かずにJリーグの季節がやってくる。J1の再開は7月14日、第11節の順延分である4試合から。この1カ月、W杯を楽しみながらも、やはりJの再開が待ち遠しかったというファン、サポーターは多いはずだ。

 このW杯ブレイクの後、とりわけJ1の上位戦線において各チームの力関係に変化は起きるのか。それが再開前にまず考えてみたいポイントだ。

川島、チョン・テセが抜けた穴を川崎は埋められるのか。

 今回は、'06年のドイツW杯後よりも遥かに、代表級の選手のヨーロッパ移籍が多い。W杯前に発表されていた鹿島の内田篤人(→シャルケ/ドイツ)、C大阪の香川真司(→ドルトムント/ドイツ)に加え、大会後には川崎のチョン・テセ(→ボーフム/ドイツ2部)、川島永嗣(→リールセ/ベルギー)の移籍が決まり、FC東京の長友佑都もイタリアのチェゼーナへの移籍が濃厚と報じられている。

 こうして見てみると、戦力ダウンの幅が大きいのはやはり川崎だ。右SBの内田がチームを離れる鹿島には、長らく左SBを務めていた新井場徹を右に持ってくるという対応策があり、長友が抜けるFC東京にも、今年はボランチでの出場が中心の徳永悠平、2列目での起用が多い中村北斗や松下年宏など、高いレベルでSBを務められる人材が揃っている。しかし、センターフォワードとGKというセンターラインのポジションで、川崎というチーム全体のクオリティを底上げしてきたチョン・テセと川島の離脱は、選手のやりくりだけでは埋められないレベルの問題だと言える。

 川崎の高畠勉監督がいかなるシステムを選択し、どのような選手を組み合わせてチームを作るのか。そしてピッチに立つ選手たちは、2人の穴を自分たちのパフォーマンスで補うことができるのか。暫定5位に位置する川崎の動向は要注目だ。

低迷するG大阪とFC東京が行ったピンポイント補強。

 主力選手をヨーロッパに送り出すチームとは逆に、W杯ブレイク中に勝負をかけた補強を行ったチームもある。優勝候補に挙げられながら、暫定11位と12位という順位に甘んじているG大阪とFC東京。ともに補強の狙いは明確で、G大阪は磐田からイ・グノ(元・韓国代表)、FC東京はJ2の横浜FCから大黒将志と、最後のフィニッシュの場面で力を発揮できるストライカーを獲得した。

 西野朗監督の起用法に異を唱えたペドロ・ジュニオールがチームを離れ、ポストタイプのチョ・ジェジンがフィットし切れず、新顔のゼ・カルロスとドドが期待外れに終わるなど、FW陣に深刻な問題を抱えていたG大阪。それだけに、チームのスタイルに合ったフィニッシャーの獲得は急務だった。スピードとテクニックを兼備するイ・グノは、これまでG大阪で成功してきたFWのタイプにかなり近く、急浮上の起爆剤となる可能性は高い。

 FC東京にもよく似た課題があった。昨季15得点を挙げた石川直宏の役割をよりチャンスメーカー的なものにシフトしたこともあって、チームの得点数が上がらず、純粋な点取り屋の必要性が明らかになってきていた。ボールポゼッションの力が高まっても、仕上げができる選手がいなければ点を取ることは難しい。決してチャンスが多いわけではない横浜FCで16試合12ゴールと、ずば抜けた得点感覚を見せていた大黒は、城福浩監督の想い描くパズルを完成させる最後のピースになり得る存在と言える。

 G大阪でもFC東京でも、宇佐美貴史や重松健太郎といった下部組織育ちの若手FWがチャンスをつかんで溌剌としたパフォーマンスを見せていただけに、即戦力の補強を残念に感じる部分もなくはない。だが、タイトル獲得あるいはリーグでの上位進出という両クラブの目標を考えれば、このピンポイント補強の選択は当然のものだろう。

【次ページ】 W杯が代表選手たちに及ぼすさまざまな精神的影響。

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