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JBLとbjリーグの統合は本物なのか?
日本バスケットボール界の起死回生。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2010/06/09 10:30
元NBA選手の田臥勇太が所属する日本バスケットボールリーグのリンク栃木は、今年4月プレーオフで初優勝。バスケ教室など地道な活動で地元に根を下ろしたリンク栃木は今季の収支を黒字とし、今月1日、下部チーム設立を発表。同一法人が2つのチームを持つのは国内初となる
衰退に危機感を抱いたJBLがbjリーグに歩み寄った。
その後両者は激しく対立する。両者というより、協会側の敵意の強さは際立っていた。
日本バスケットボール協会は、bjリーグに参加した選手を、協会の登録選手から抹消(日本代表選手になる資格の剥奪)、審判は公式審判の資格剥奪などの措置を打ち出す。当時、関係者は「bjリーグの試合は見るな」とも言われていたという。一方で、将来的なプロ化を目指すとあらためて打ち出し、プロチームの参入も認めることにした。やはり問題意識はbjリーグと共通していたのだ。
こうした対立状態が続く中、ようやく今春、「2013年をめどに統合する」ことを決めた。
背景には、かつて以上の危機感がある。
プロリーグとして、ときに会場を満員にするなど一定の盛り上がりを見せるbjリーグに対して、JBLの停滞は続いたままだ。衰退していると言ってもいいかもしれない。
その中で、'07年に完全なプロチームであるレラカムイ北海道、リンク栃木ブレックスがJBLに参入。とくにリンク栃木は地域での広がりを見せ、昨年、単年度黒字を達成している。それがbjリーグへの敵対心を弱めた面がある。
一方のbjリーグも13チームに拡大、さらに3チームの参加が決まっている。順調のように見えるが、高松が経営危機を迎えるなど、運営面でまだまだ不安定なチームも少なくない。
ナショナルチームの隆盛が日本バスケ界再興の原動力に。
ナショナルチームの不振も著しい。
男子日本代表は1976年のモントリオール五輪を最後にオリンピックから遠ざかっているが、世界選手権でも低迷。アジア選手権でも、'05年に5位、'07年8位、'09年10位と地盤沈下が進んでいる。
世界とつながる競技では、オリンピックをはじめとする国際舞台での活躍こそ、競技の活性化につながる。国内の混乱を解決し、リーグの基盤強化、強い日本代表を送り出せる体制を整えなければ先がないと、手を携えることになったのである。
ぎくしゃくした両者の関係には一抹の不安が残るが……。
とはいえ、不透明な部分は残っている。
統合を発表した会見は、実は両者そろって行なわれなかった。
「一緒にできないというところで察してください」と協会関係者は言った。まだまだ、わだかまりが解けていない部分があるということだ。
そこに一抹の不安はある。必要なのは、強烈なリーダーシップではないか。
バスケットボールは協会への登録人口だけでも約62万人と、国内でもトップクラスの競技人口を誇る。学校の体育の授業で全員が接することもあって、誰もが親しみを感じている競技でもある。この統合がうまくいけば、さらに人気が高くなるポテンシャルは十分にある競技なのだ。そう考えれば、案外オリンピックへの復帰も近いのかもしれない。