自転車ツーキニストのTOKYOルート24BACK NUMBER
お江戸の中心部をグルッと巡る。
外堀通りは不思議な名所密集地帯!
text by
疋田智Satoshi Hikita
photograph bySatoshi Hikita
posted2012/06/27 06:00
市ヶ谷駅の遠景。外堀沿いにはJR総武線など重要な鉄道も走る。ちなみに、この市ヶ谷駅から飯田橋駅の間の外堀直下には、地下鉄の広大な車庫が広がっている。
都心を巡っていると、どこにいっても「外堀通り」が出てくるのを不思議に思ったことはないだろうか。
赤坂でも外堀、お茶の水でも外堀、日本橋でも外堀。いったいどうなってるのだ? とね。特に東京に初めてやってきたばかりの頃。少なくとも私はそう思った。
それもそのはず、外堀通りは皇居から数えて二つ目の環状線で、都心をぐるりと回っているからだ。
外堀通りに対する“内堀”通りの構造は簡単で、現在も皇居のまわりを取り巻く、いわゆる「お堀」。あれに沿った一周5kmの道路が内堀通りである。昨今の爆発的マラソンブームで、もうここはランナーだらけ。
その外側、外堀沿いにあるのが外堀通りなんだが、正確には「東京都道405号外濠環状線」という。一周12.4km。
外堀自体は、現在、埋め立てられたり、神田川の一部になっていたりと、円にはなっていない。通りも一部途切れる部分もあって、内堀通りよりは分かりにくいけど、基本的には、都心の有名街を数珠つなぎに繋いだ環状大通りだ。
港区、千代田区、中央区、文京区、新宿区を通る。この外堀の中にかつて“江戸都心”は建設された。数々の武家屋敷が存在し、奉行所、つまり、お役所があった。つまりこの中こそが本来のザ・都心なのだ。
ということで、今回は、この外堀通りを基本に、江戸の中心地をめぐってみよう。
出発点は赤坂、いや、赤坂見附だ。
赤坂見附で見上げる、バブルの歴史的建造物“赤プリ”。
赤坂見附は、地下鉄の駅としてスペシャルな駅で、あらゆる路線が通る“乗換駅”となっている。
そもそもこの“見附”という言葉自体がそうで、意味を問われるなら「交通の要所や複数エリアの境界に置かれた見張り所」というようなことだ。つまり「見附」には周囲からさまざまな往来や“気”が集まるゆえに、そこに検問所や見張りが置かれたってわけ。そこには「滅多なものはご公儀のそばに寄らせはしまいぞ」という意志がある。
この外堀通りには「見附系」の地名が多い。この赤坂見附に限らず、四谷見附、市ヶ谷見附、新見附と、いろいろなところに地名として残っている。
赤坂見附の交差点から見上げると、おお、有名な赤坂プリンスホテルだ。まだ建ってる。ピカピカと陽の光を反射してるよ。いまだに美しいと思う。
これを取り壊し始めるのが、今年の7月からだったか。ああ、もったいない。もったいない。けれど、やはり壊してしまうのだという。日本初の「老朽化した超高層ビルの取り壊し」の例になるということで、担当した大手ゼネコンは張り切っているらしい。
ふーむ、外見だけなら、あまり「老朽化した」とは見えないんだけどね。私の頭の中では、しきりにもったいない、もったいない、ばかりが点滅する。
バブルを象徴する建物、つまり「歴史的建造物」ですらある、とも思うし。ちなみに設計はあの丹下健三だ。
ふーむ、ま、「もったいないと思うんだったらお前が買え」とか言われたらどうしようもないんで、そのもったいない赤プリを右手に見ながら、ひたすら紀伊国坂を登っていこう。