スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
メダリストの背景にある国家の思惑。
ロンドン五輪で「世界への扉」を開け!
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byGetty Images
posted2012/06/24 08:01
今年3月11日、陸上の世界室内選手権で優勝したイシンバエワ。自ら保持している世界記録の5m1cmの記録は破れず、この日の最高記録は4m80cmだった。
ロンドンオリンピックが近づいてきたが、近年のオリンピック報道を見ていて気になるのは外国の競技に日本人が関心を払わなくなっていることだ。サッカーを除いては内向きになっている気がする。
1990年代、2000年を超えるあたりまでは世界のスーパースターについてのカバレッジがそれなりに多かったのだ。
1970年代まで遡れば、競泳のマーク・スピッツ、体操のナディア・コマネチ。1980年代になると陸上のカール・ルイス対ベン・ジョンソン、競泳のジャネット・エバンスを知っている人も多かった。世紀をまたいでイアン・ソープ、今ではウサイン・ボルトがいるものの、競泳のライアン・ロクテなど、もっと知られていいと思う。
五輪は海外のスポーツ事情を知る「世界への扉」だ!
私が恵まれていたのは、1980年代までの日本のオリンピック報道は、外国にも目配りが効いていたことである。それは世界選手権でもそうだったが、日本選手ばかり映すような愚は犯さなかった。スポーツ中継は「世界への扉」だったのだ。
オリンピックは海外のスポーツ事情を知るチャンスでもある。先日、TOKYO MXテレビの「ゴールデンアワー」という番組に出演したところ、ロシア、コートジボワール、ポルトガル、韓国のゲストの方々と一緒になった。それぞれの国ではオリンピック中継でどんな競技が人気なのか、体育教育がどうなっているのか、とても興味深かった。
なかでも驚いたのはロシア、旧ソ連時代の教育の話。
女性ゲストのオクサナさんの高校時代の得意教科はなんと「初級軍事教練」。これにはぶったまげた。男女問わず、校舎の地下にある射撃練習場で練習をするという。分解から組み立て、射撃に必要な一連のものを高校の場で学ぶそうで、それを聞いて、ソ連が射撃とか、冬季競技のなかで射撃と距離競技を組み合わせたバイアスロンが強いのは、そうしたインフラが整っているからだったのか、と思い当った。