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陸上の五輪代表も“名”より“実”。
選考会での成績を重視する理由とは?
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byTetsuhiro Sugimoto/AFLO
posted2012/06/19 10:30
記者会見に臨む五輪陸上代表。左から短距離の江里口匡史、髙瀬慧、福島千里、やり投のディーン元気、長距離の吉川美香、短距離の金丸祐三。今回の代表にはディーンら8名の大学生がメンバー入りし、世代交代を印象付けた。
6月8日から10日にかけて行なわれた日本選手権後の代表選考会議を経て、11日、陸上のロンドン五輪代表39名が発表になった。
何度か代表選出方法について聞かれる機会があったので、あらためて代表選考方法を説明しておきたい。
陸上は、日本陸上競技連盟と日本オリンピック委員会との交渉で、40名の派遣枠が決められている。この枠内で、まだ出場権が確定していないリレー種目(ただし、男子の4×100mリレーの候補となる選手は40名の枠内で選出)以外のすべての種目について代表を選ぶ。
このうち、日本選手権前にすでに内定を得ていた選手、「国際陸上連盟が定める五輪参加のA標準記録を突破していて日本選手権で優勝すること」という基準にのっとって大会で自動的に内定した選手が、あわせて21名いた。それ以外の代表選手について、大会後に議論されたわけである。選ばれる資格のある選手の中からどう選ぶか、種目内での選手の比較があり、同時に種目間での比較も行ないながらの選考である。
「一発勝負でのパフォーマンス」を優先した選考基準。
焦点は、A標準の記録を持っている選手が優先されるのか、A標準より劣るB標準の記録ながら、日本選手権で活躍した選手を選ぶのかであった。そして発表になった選手のリストからうかがえるのは、日本選手権の成績を重視したことだ。
例えば、男子1万mでは、A標準の記録を持っている選手ではなく、持っているのはB標準の記録ながら優勝した佐藤悠基を選出。棒高跳では、数々の国際大会で代表経験を持ち、A標準を持ってはいるが日本選手権で2位だった澤野大地ではなく、B標準の記録しかクリアしていないが日本選手権優勝の山本聖途が選ばれた。
ロンドン五輪の代表選考は、「一発選考」を採る競泳をはじめ、柔道でも最終選考会の成績に重きを置く傾向にあった。代表選考会と銘打った大会での成績を重んじたのは、その流れを引き継いでいるようにも思える。
いくら好記録を持っていても、ここ一番で実力を発揮できなければ意味はないのは確かなところではある。だから、大会にあわせる調整能力も重要な要素だ。そういう意味で、今回の選考の方向性は理解しやすい。