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メダリストの背景にある国家の思惑。
ロンドン五輪で「世界への扉」を開け!
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byGetty Images
posted2012/06/24 08:01
今年3月11日、陸上の世界室内選手権で優勝したイシンバエワ。自ら保持している世界記録の5m1cmの記録は破れず、この日の最高記録は4m80cmだった。
国家とスポーツの歴史を知ると五輪が重層的に楽しめる!
イシンバエワは棒高跳びに転向してわずか6カ月後、3度目の競技会であるワールド・ユース・チャンピオンシップスで4m10cmを跳んで優勝してしまった。2000年のシドニーオリンピックでは決勝に残れなかったものの、2004年のアテネ、前回の北京と金メダルを獲得している。
競技の枠を超えた選手育成システムを持っていたソ連の名残りを、彼女に感じるのはこうした経緯からである。
オリンピックを見れば、それぞれの国の特徴が見えてくる。ロシアだけではない。ホスト国のイギリスは、いまも陸上の中距離に情熱を注ぐ。それは1954年にオックスフォードで医学を学んだロジャー・バニスターが人類史上初めて1マイル(およそ1600m)で4分の壁を破った歴史があるからだ。
1950年代、1マイルで4分の壁を破ることは人間の限界に挑む貴い挑戦だと考えられていて、日本でもニュース映画館で上映されていたという。
そうしたバックグラウンドを知ってからオリンピックを見ると、もっと重層的に楽しめるはずだ。