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可夢偉が10位に終わった3つの理由。
不運を克服し、日本人2人目の快挙!
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byMamoru Atsuta
posted2012/04/19 10:30
F1中国GPのスターティンググリッド。左の列の2番目が可夢偉のマシンで、その前方から右リアにかけてタイヤ痕のようなオイルの跡が確認できる。
自己最高位の3番グリッドに着いてマシンを降りた小林可夢偉に、担当エンジニアのフランチェスコ・ネンチが歩み寄って、何かを伝えた。
それを聞いた可夢偉はやや不機嫌そうな表情をしながら二、三歩歩くと、シューズの裏で路面をゴシゴシとこすっていた――。
じつはF1の決勝レースが行われる前のサポートレースで事故があり、そのオイルがグリッド上に残っていた。運が悪いことに、そのオイルはポールポジションのニコ・ロズベルグのグリッドの横をかすめた後、その直後の可夢偉の3番グリッドを貫通し、ピットレーン側に大きく逸れていくように流れていた。
つまり、24人の中でたった1人、3番グリッドからスタートする可夢偉だけが、不利を受ける状況となっていたのである。
オイルを踏んだタイヤが空転し、次々と後続に抜かれていった!?
そして、午後3時4分。中国GP決勝レースのスタートが切られた。
「データを見ると、リアクション(反応)自体はチームメートよりも早かった。でも、なぜか前へ進んでいかなかった」という可夢偉のマシンは、フロントロウのメルセデスAMG勢から大きく取り残されると、右側後方からキミ・ライコネン、後方から加速してきたジェンソン・バトンにあっさりとかわされてしまう。
さらに4コーナーの立ち上がりでルイス・ハミルトン、7コーナーでアウトからチームメートのセルジオ・ペレスにもポジションを奪われて、早々に7番手へと後退した。
この後退は、ポジションを4つ失っただけにとどまらなかった。
前日の予選で4位を獲得した可夢偉だったが、その渾身のアタック中にハードブレーキングを犯し、タイヤの一部が異常に摩耗して平らな部分ができた状態の“フラットスポット”を作ってしまっていたのである。