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怒涛の追い上げも届かず……。
埼玉西武がシーズン終盤戦に見た夢。 

text by

永田遼太郎

永田遼太郎Ryotaro Nagata

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photograph byHideki Sugiyama

posted2011/11/11 10:30

怒涛の追い上げも届かず……。埼玉西武がシーズン終盤戦に見た夢。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

今季開幕前から右肘の痛みに悩まされていたという涌井。5月時点で既に分かっていたという肘の遊離軟骨だが、このオフの手術で除去することが決定している

 完敗だった。

 横綱に胸を借りた幕下の力士のように、土俵際に追い込んだはずの埼玉西武は、最後の一手でソフトバンクに軽く捻られていた。

 これがパ・リーグ優勝チームの力か。これがレギュラーシーズン20.5ゲームの差だろうか。

 パ・リーグ CSファイナルステージ3連敗――。

 この事実を受け止めた西武・渡辺久信監督から“力負け”を示唆するコメントが何度も聞かれた。敗戦直後にソフトバンクとの差を聞かれた渡辺監督は「投打とも全部」と完敗を認める。それほどまでにソフトバンクの力は抜けていたのだ。

 だが、西武はこれ以上ない状態でソフトバンクとの最終決戦に臨んでいたはずではなかったのか。

 レギュラーシーズンでは最終戦で3位オリックス・バファローズを抜き去って逆転のCS進出、そのファーストステージでは難攻不落のダルビッシュ有をも打ち砕き、レギュラーシーズン2位の日本ハムに連勝を飾った。

 心はひとつに――。

 誰が声をかけるわけでもなく、自然とチームはひとつにまとまり、選手、スタッフ、誰一人浮いた存在がいなかった。これほど心身ともに充実したチーム状態は日本一を達成した'08年以来ではないか。そんな目で彼らの戦いを見ていたのだが。

最終戦に立ち向かう選手たちに激励は必要なかった。

 終盤戦の西武の一体感を示すこんなエピソードがある。

 日本ハムを相手にしたレギュラーシーズン最終戦の試合前、渡辺は選手及びスタッフに特別な言葉を何ひとつかけなかったという。

「今日は選手たちを信じるしかないと思っていた。今のチームなら選手たちはきっとやってくれると信じていたからね」

 その信じる想いはコーチ、選手に伝わった。

 最終戦、2点差に追い上げられた9回表1死満塁の場面で、西武の外野陣は右中間、左中間を狭める深めのシフトをとった。

 外野の前に落ちれば同点、引き分けならCS進出を逸する大きな場面だったが、外野守備走塁コーチの河田雄祐は迷いもなくこのシフトを選択した。

「監督は基本、同点までは仕方ない、裏の攻撃で返せば良いという考えを持っています。なのであの場面でもこれまでどおり逆転の走者だけ返さないという普段どおりのシフトをとりました」(河田雄祐外野守備走塁コーチ)

 すると打球は右中間後方へと飛んだ。

 これをセンターの秋山翔吾が背走しながら最後はダイビングキャッチ。

「あれで2、3年寿命が縮んだねぇ」(渡辺監督)

 監督、スタッフ、選手が一体となって生まれたファインプレーだった。

【次ページ】 キャプテン中島裕之が醸した、勝利への執念。

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