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続・172cmのスラムダンカー
text by
小尾慶一Keiichi Obi
photograph byNBAE/gettyimages/AFLO
posted2006/02/02 00:00
NBAの公式ウェブサイトを開き、スリーポイントシュート(3P)のランキングを覗いてみよう。意外な選手が上位につけているはずだ。彼の名は、ネイト・ロビンソン。以前、このコラムで紹介した「172cmのスラムダンカー」である。
ロビンソンは今、ニューヨーク・ニックスでプレーしている。昨年のドラフトでサンズから1巡目21位指名を受け(直後にニックスへトレード)、サマーリーグではチームの得点王に。主力のケガもあって、開幕後も出場機会を増やし、年明けからスターターに定着した。平均約20分の出場で、9得点、1.9アシスト。21歳のルーキーとして、チーム内で着々と地歩を固めている。特に、46.1%の3P率(リーグ3位)は立派の一言だ。
ワシントン大時代のロビンソンは、外角シュートが得意な選手ではなかった。1年生時の3P率は、わずか25.7%。それを、数年間でNBAレベルまで引き上げたことになる。彼がダンクできるのは、持って生まれた運動能力(垂直跳び111cm!)があるからだ。しかし、シュートを上達させるためには、地道な努力を長年に渡って続けるしかない。
では、その努力を支えたのは何だったのだろう?
1年前、彼は地元紙に次のようなコメントを残している。
「息子がいることで、だれてしまった時に『心を入れ替えてがんばらねば』という気持ちになれる。自分を見失った時も、あの子を見て自分の努力が足りないのを実感するんだ」
先日のシアトル戦、彼の側にはやはり幼い息子の姿があった。
「あの子を見ると、とにかく微笑んでしまう」試合後、ロビンソンは記者たちにそう語った。「子どもを持つ親なら、誰でも想像できるだろ。自分の子どもがニックスの選手たちとコートにいるのを見て、どんな気分がするのかを。……(ソニックスの)レイ・アレンが息子を抱いているのが見えた。だから、俺はあの子に言って聞かせたんだ。『なあ、今お前を抱いているのが誰なのかわかる?
オールスター選手なんだぜ』って」
格闘家のような身体、鋭い目付き、喧嘩っ早いことでも有名だ。それでも、面と向かって話せば大人の気遣いが伝わってくる。この辺りの性格的バランスが、地道な練習と豪快なダンクを両立させ、ラリー・ブラウンのようなうるさ型ヘッドコーチに信頼される理由なのだろう。そして、そうしたバランスを保つ上で、父親としての視点が大きなプラスになっているのは間違いない。
NBA初ダンクは、昨年11月28日のヒート戦。その数日前には、試合残り0.6秒で劇的な3Pを沈め、チームを勝利へと導いた。現在、どちらのプレーもNBA.comで見ることができる。だが、彼の本当の強さは、そうしたハイライト映像の外側にあるのかもしれない。
ロビンソン ショートインタビュー
[試合後のロッカールームにて]
──3Pが好調ですが、その秘訣は?
練習さ。繰り返し練習することだよ。NBAでやっていくために、何度も何度も練習をする。シューティングは毎日やっている。毎日やらなきゃだめなんだ。それから、集中力。練習中、シューティングに集中するよう心掛けている。
──自分でもうまくなっていると思いますか?
そう思うよ。毎日練習しているから。バンクショットとか、3Pとか、色々とね。それがようやく報われてきた。だから、この状態を維持する必要がある。たとえば、練習後に俺は100本フリースローを打っている。こういうことのお陰で、つまり、ハードに練習することでうまくいっているんだと思う。
──今、他に上達すべき点はありますか?
(ポイントガードとして)コート上の司令官のようにならなきゃだめだ。ターンオーバーの多さもそうだし、試合中、コーチを見なくても次にどんなプレーが可能かを把握しておく必要がある。
──開幕当初との一番の違いは?
プレータイムを多くもらえるようになったこと、それから、シューターとして信頼されるようになったこと。スリーポイントシュートを評価されるようになってきた。今後の目標は、プレータイムをより多くもらって、より多くの試合に出場することだね。
──ところで、試合中、ダンクを試みていましたね。
強烈なファールを受けて、決められなかったけどな。でも、とにかく俺はハードにプレーしているだけさ。
──君にとって、ダンクはどういう存在?
(少し考えてから)わかんないよ。ダンクはずっと、すごく好きだったから……。うーん、どう表現すればいいのかわからない。楽しくて、すごくて、皆をびっくりさせる素晴らしいものだってことは確かだと思う。
──オールスターゲームのスラムダンクコンテストについて、何か話せることはある?
確かなことはまだわからない。でも、できればコンテストに呼ばれたいね。
(ダンクコンテストは2月18日に行なわれる。原稿執筆時に公式発表はまだないが、ロビンソンが参加する可能性は高いと言われている)