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カギを握るGMの「言動」。 

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安藤正純

安藤正純Masazumi Ando

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photograph byGetty Images/AFLO

posted2009/03/13 00:00

カギを握るGMの「言動」。<Number Web> photograph by Getty Images/AFLO

 ベルリンで特徴的なのは身体能力の高さである。ソフト、ハードの両面でフィットネスを重視したことで、「試合最後の15分間」に強くなり、この時間帯で多くの得点を稼ぎだして、勝利を上積みしている。大躍進の原動力になっているのはFWボローニン、怪我からようやく復帰したパンテリッチ、GKドロブニ、そして守備を引き締めるシムニッチとフリードリヒだ。このうちボローニン(19試合10ゴール)とパンテリッチ(17試合6ゴール)は予算不足のためレンタルで獲得した選手である。2年前、クラブは16人を解雇、その穴埋めに19人を入団させるという無茶苦茶な人事を行なったが、ようやくチームとしてまとまりを見せてきたということなのだろう。

 ではこのままの調子でベルリンは最終節まで突っ走ることが出来るのだろうか。残念ながらそうは思えない。パンテリッチは常々、「自分は過小評価されている」と不満げで、気難しい性格が災いを招きかねない。この選手が出場するのとしないのとでは、チームが獲得する得点と勝ち点で、ほぼ倍の開きがある。マルセリーニョを手なずけられなかった過去があるだけに、慎重に対応しないとベルリンはシャルケと同じ運命を辿るかもしれない。

 だが、より深刻な問題は選手への応対よりも、むしろGMの操縦術ではなかろうか。ベルリンのGMは、バイエルンのヘーネスGMの実弟ディーターだ。両者は折にふれて比較されてきた。ユーロとW杯で優勝を経験し、引退後は欧州屈指の名GMとして名を馳せ、理知的で経営センス抜群の兄に対し、弟は真逆の道を歩んできた。そして弟の一般的な評価といったら「絶対主義的独裁者のごとくヘルタを率いてきた。過去10年間、臆病なイエスマンだけを集め独裁体制を築いてきた」と、これ以上ない厳しいものがある。

 大柄な体格と禿げあがった頭部を見ると、義理人情に厚くて懐が深い“親分”のようにも映るが、本質は「発言力を持とうとする人間を許さず、忠告や批判を徹底的に嫌う」ワンマンGMなのだ。

 ファーブル監督は入団前、リーグ優勝をしたら最高で1億5000万円、CL出場を果たせば1億円の特別ボーナスを受け取る契約をかわした。選手へのボーナス交渉もこれから熱が加わる。しかし財政再建に手間取る現在、GMの胸先三寸で何事も決まる体質に監督と選手が嫌気が差したら、あっという間の転落劇となること必至だ。実際に2年前は、人事のゴタゴタで9試合連続勝ち星なし、4連敗を喫するなどして、5位から一挙に降格圏内に落下した。成績悪化となればGMのボルテージは当然上がる。そして悪循環の始まりとなるわけである。

 このチーム、注目すべきはGMの言動なのである。

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