プロ野球偏愛月報BACK NUMBER
球団合併、動き出した船は止まらない……。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byShigeru Tanaka
posted2004/06/29 00:00
近鉄とオリックスの合併がほぼ決まった。合併と言っても主体となるのはオリックスで、近鉄は今季限りで55年の歴史に終止符を打つ。
もう1つの合併が成立し、1リーグ10球団による球界運営は既定路線と言ってもいい。僕はかなり早いうちから1リーグ制への移行を正確に耳にしていたこともあり、自著の中で再三、1リーグ制について言及してきた。シリーズ『プロ野球問題だらけの12球団』では01年版以降、言い続けてきた。もちろん、1リーグ制に反対する者として、である。
しかし、状況は変わらない。パ・リーグ各球団は赤字を増やし続け、セ・リーグ各球団は巨人戦の放映権料に守られ、そこそこの利益で満足している。僕はリーグや球団を減らすことには大反対。むしろ球団を増やすべきだと、これも再三言い続けてきた。しかし、そんな動きは微塵もなかった。
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どうして球団を減らしてはいけないのか。最大の理由は、プロが門戸を狭くすることで、アマチュア球界から今ほど選手を獲らなくなる恐れがあるからだ。支配下登録の70人枠が80人枠に増えても、球団が減ればレギュラーになれる可能性が減る。
「球団と選手の数を絞って、生き残った選手による質の高いプレーを見せることがプロ」という意見には一理ある。しかし、アマチュア時代に盤石の実績がなかった落合博満(元ロッテなど)、イチロー(マリナーズ)、中村紀洋、岩隈久志(近鉄)などは、当時、10球団しかない環境だったらプロに入っていなかったかもしれない。そういう損失は出来る限り回避するべきだが、球団数が減ることによって第二の落合、イチローの出現は可能性が著しく狭められた。
1リーグ10球団、あるいは8球団による球界運営になれば、当初、リストラ選手の救済が盛んに行われ、アマチュアからの人材供給スピードは落ちる(指名人数が減る)。また、実績第一の臆病な監督、コーチは、新人選手よりリストラ救済組を優先的に起用するかもしれない。つまり、〃旬〃を逃がす選手が多くなる危険性が高い。この1、2年の遅れは、若い選手に致命的なダメージを与える。だから、くどいようだが、リーグも球団数も減らしてはいけないし、増やす方向に向かわなければいけなかった。
渡辺恒雄・巨人オーナーは「8球団が理想」とテレビに向かって吼えていたが、そんなことをしたらプロ野球は間違いなくファンから見捨てられる。渡辺は巨人の永遠の繁栄を願って改革を進めているのだが、僕の目には自殺願望者のようにしか見えない。巨人の繁栄を願った改革がプロ野球を衰退させることになれば、巨人が存在することの意味がなくなるからである。
選手会も同じである。合併反対、球団数の増加を訴えても、選手の年俸上昇には無頓着、というより年俸上昇を煽ってきた。選手が金持ちになって球団が破綻すれば、選手はプロ野球選手として生きられない。どうしてそんな当たり前のことがわからないのだろうか。
動き出した船はもはや、誰にも止められない。僕にできることは、その行く末を見届けることだけである。