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<100人が語るRUN!特集> 村上春樹へのQ&A 「そうだ、ランナー村上さんに聞いてみよう」 (1) 

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村上春樹

村上春樹Haruki Murakami

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photograph byMizumaru Anzai

posted2011/03/17 06:00

<100人が語るRUN!特集> 村上春樹へのQ&A 「そうだ、ランナー村上さんに聞いてみよう」 (1)<Number Web> photograph by Mizumaru Anzai

全力疾走の美学、箱根駅伝、夫婦喧嘩の解消法……。

Q.5 マラソン後半できつくなったとき、最後まで走り続けられるのは、私の場合、自分に対する「意地」しかないのですが、村上さんはどうやって乗り越えてますか? (40代・男性)

僕がいつも決めてやっているのは、最後の400mを全力疾走することです。どんなきついレースでも、どんなコンディションでも、そのときに出せる最大のスピードで全力疾走します。それは一種の礼儀であり美学だと思っているから。だから、へとへとになったら、すこし抜きつつ、でも最後の400m分だけの力は蓄えておく。最初から最後まで美学を貫こうと思ってももたないから、これだけはやろうという部分突破的な美学を作っておくんですね。

Q.6 箱根駅伝を見ますか? (20代・男性)

山上りは好きだから見るけど、あとの区間はあまり見ないですね。でも、僕の知り合いで2日の朝から3日の午後までずっと見ているという人がいるし、ひどい人になると、1日のニューイヤー駅伝まで見て三が日ずっと駅伝を見てますよね。僕はもちろん走るのを見るのは好きだけど、そこまでは付き合えないよねえ。自分で走っているほうがやはり楽しい。富士屋ホテルに泊まったときには、朝早く駅伝のコースを上まで走ってみるけど、なかなか楽しいです。

Q.7 現在就職活動中の大学3年生です。ごく控えめに言って、最近とても忙しいです。就活前までは週に80km走っていましたが、ついに最近は走ることを止めてしまっています。春樹さんは忙しい時期に、どのようなモチベーションをもって走り続けているのでしょうか? (20代・男性)

年がら年中、毎日走らなければいけないということはないです。毎日しっかり走らなければいけない年齢もあるし、走ろうと思ったときに走ればいいという年齢もある。ただある時期、ある年代のときは、毎日本当にまじめに走らなければいけない。それ以外のときは、自分の生活ペースに応じてそれなりに走ればいいと思います。走り込むべき年代は人それぞれ違うけど、「今は走らなくちゃ」とはっきり決意するときがあるはず。そういうときは無理しても走らないといけない。

Q.8 昔の腹の立ったことやイヤな出来事が、脈絡なく脳裏にポッと浮かんでしまって、思わず足を止めたり、何だか走ることがツラくなってしまうことがあります。村上さんはそんなことありませんか? (30代・男性)

ありますね、言われてみれば。恥ずかしかったこととか、すごく悔しかったこととか、なぜか思い出すことがある。でも、どうしていいかわからない。それは書店でトイレに行きたくなるのと同じようなものです(笑)。

Q.9 久しぶりに夫と喧嘩をしました。私は頭にきて、飲んでいたグラスを床にぶつけて、派手に割ってしまいました。しかし、自分のイライラやストレスが、茶碗とかお皿を壊すことで解消されてすっきりすることを感じました。走ることはそれに匹敵するくらいすっきりするでしょうか? (30代・女性)

しません。それはランニングなんかでは解消できないです。走るのはもっと内的な行為だから。頭に来ているときはある程度直接的な破壊が必要なんだと思います。やっぱり何かをとりあえず破壊してから走ったほうがいいんじゃないかな(笑)。

次回の公開は、3月24日(木)。ランナーズ・ハイやマラソンにおける創造性、
減量、リタイアについてなど、多岐にわたる質問に村上さんが答えます。
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