- #1
- #2
Number ExBACK NUMBER
東大・京大合格30人…富山の“偏差値70”超進学校が「練習は毎日1時間半」「推薦ナシ」でも2年連続全国高校駅伝出場のナゼ 選手の「意外な胸の内」は?
posted2025/02/22 11:01

初出場の2023年都大路でタスキをつなぐ当時1年生の高倉亜子と当時2年生の柴田美冴。大会後は彼女たちも進路に向けて決断を迫られることになる
text by

山崎ダイDai Yamazaki
photograph by
富山中部高校提供
2023年の8月。インターハイが終わると、富山中部高で陸上競技部監督を務める水原豊は、3年生の佐伯紅南と折に触れて話をしはじめた。
全国的にも名の知れた進学校である同校では、基本的に3年生は夏のインターハイ路線で部活を引退する。ただ、この年は佐伯の動向如何で、秋の県駅伝で目下31連覇中の“常勝”富山商高を倒せる可能性が出てきていた。
春先からも「いつかは決めなあかんよ」と伝えていた。ただ、あえて急かすことはしなかった。駅伝シーズンをどうするか。部活動と勉強の両立は可能なのか。もちろん陸上部の監督という立場では、部活動を続けてほしい思いはあった。ただ、大学進学という人生の一大イベントを考えると、無理強いするわけにもいかない。
ADVERTISEMENT
「そもそも本気で都大路を走ろうと思ってみんな入学してきていないわけですよ。これまでだって短距離ブロックどころか他の部活から人を借りて何とか駅伝に出ている年もあったくらいで。親御さんだって優先順位で言えば間違いなく勉強の方が上。でも、『もし佐伯が本気で都大路に行きたいなら、チャンスのある奇跡的なタイミングではあるよ』という話はしました」
この時、もうひとり佐伯にアドバイスを送ったのが、当時3年生の学年主任を務めていた森山道だった。森山は富山中部高の陸上部OBで、1991年に同校男子が一度だけ都大路に出場した時にも3年生部員として在籍していた。
もちろん学年主任という進学実績が問われる立場からすれば、微妙な立ち位置なのも事実だった。それでも、高校時代に「憧れの舞台」を目にしているからこそ、元ランナーとしての想いも加味してこんなアドバイスを送ったという。
「大学受験は毎年ある。でも、高校3年生の都大路は一度しかない。もし出場できる可能性があるなら、やってみるのも手だと思う」
3年生部員が異例の競技継続…全国が現実味
そんな指導者たちの言葉がどこまで響いたのかはわからない。
ただ、結果的に佐伯は同校では異例の部活続行を決めた。水原はこう振り返る。
「最終的には『部員は家族みたいなものだから、少しでも長くやりたい』と。チームメイトへの想いもあったんでしょうね」