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東大・京大合格30人…富山の“偏差値70”超進学校が「練習は毎日1時間半」「推薦ナシ」でも2年連続全国高校駅伝出場のナゼ 選手の「意外な胸の内」は?
text by

山崎ダイDai Yamazaki
photograph by富山中部高校提供
posted2025/02/22 11:01
初出場の2023年都大路でタスキをつなぐ当時1年生の高倉亜子と当時2年生の柴田美冴。大会後は彼女たちも進路に向けて決断を迫られることになる
ちなみに、彼女たちの練習を見てふと思ったことがある。強豪校と比べて走り込み等であまり追い込んでいないことに加え、短距離的な動きづくり中心の練習も多い。それは傍から見れば、むしろ大学での伸びしろが十分残っているようにも思える。
高3の受験シーズンはともかく、「進学後は競技を続けないの?」と聞いてみた。すると、3人は顔を見合わせ「もういいかなぁ。文化系のサークルとかもやってみたいし……」とカラカラと笑うのだった。
実にドライ――もとい現実的である。
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ただ、それも無理からぬことかもしれない。あと半年でやり切ろう。ここまで全力でやってきたんだ。そんな充足感が、3人の表情には表れていた。世の中、みんながスポ根に全力ベットなはずもない。それも含めて「10代進学校ランナー」の揺れる心境のリアルなのだ。ただ、これから夏のインターハイ路線を経て、彼女たちの思うところも変わっていくのかもしれない。
「進学校なのに…」の褒め言葉には葛藤も
水原はそんな彼女たちの想いを知ってか知らずか、こんな風に達観する。
「やっぱり“進学校なのに”とか“進学校だから”という枕詞があっての『すごいね』って、最初は抵抗があったんですよ。だって陸上競技はスタートラインに立ったら、私立も公立も、進学校もスポーツ校も関係ないんです。練習時間が短くて、勉強をたくさんしているから10m前からスタートさせてくれるルールではないので」
そもそも競技経験者でもあり、部の指導に熱量を注ぐ指導者としては、公立・私立の別や学業成績など競技外のさまざまな変数を取っ払って、単純にひとつでも上の順位を目指したいという渇望もあるのだろう。
「でも、実際問題こういう制限のある環境で、もちろん全国の壁は厚いけれど『これまでの自分たちの記録を超えよう』とか、できうる範囲の挑戦をしていく。その中で、いわゆる非強豪校や進学校であっても『できるんだ』ということを伝えられればいいのかな……と思うようにはなりました。いまは1年1年、文武両道を貫いて、それこそいま流行りの“二刀流”で成長している姿を見せることが私たちの意義なんじゃないかと思っています」
きっと今夏も、水原は3年生の決断に頭を悩ませるのだろう。「どうしたもんかなあ」と。


