- #1
- #2
Number ExBACK NUMBER
東大・京大合格30人…富山の“偏差値70”超進学校が「練習は毎日1時間半」「推薦ナシ」でも2年連続全国高校駅伝出場のナゼ 選手の「意外な胸の内」は?
text by

山崎ダイDai Yamazaki
photograph by富山中部高校提供
posted2025/02/22 11:01
初出場の2023年都大路でタスキをつなぐ当時1年生の高倉亜子と当時2年生の柴田美冴。大会後は彼女たちも進路に向けて決断を迫られることになる
3年生がそんな覚悟をみせたことで、水原の目には後輩たちも目の色が変わったように見えたという。酷暑の8月も終わりかけたころのことだった。
一方で、いざ駅伝に向けて走り出すにあたっても、進学校特有のスケジュールが大きな壁になっていた。
「短い練習時間」の壁を越えるには?
富山中部高で決められた放課後の部活時間は、16時過ぎから18時までの約2時間しかない。秋~冬場となればそれはさらに短縮され、17時半までとなる。しかも半数以上の部員がそこから塾通いとなるため、その時間は厳守。つまりアップやダウンの時間を差し引くと、そもそも物理的に長い距離走のトレーニングができないのだ。
ADVERTISEMENT
「午後のトレーニングは全ブロック合同で動きづくりのドリルや、サーキットトレーニングをやることも多いですね。もちろんできるだけ距離も走ろうとはしていますが、そもそも時間がないので短めのインターバルなどをやることが多いです」
ただ、そこはもともと短距離種目出身の水原の手腕が活きるポイントでもあった。
「男子と違って距離が短い女子の駅伝は、基本的にスピードで押せる割合が大きいんです。3kmくらいまでは結局、短距離が速くなれば走れてしまうと私は考えていて。だったら時間もないし、そういうアプローチでいいだろうと」
その分、9月からは距離走を朝練習で行うことを部員たちが自ら決めた。疲れで夜の自宅学習に影響がないよう、体力が残っている朝に距離を稼ぐ狙いもあった。
ただ当然、それはシンプルにかなりキツいスケジュールになる。
実際に3年時の佐伯のスケジュールを一例に挙げれば、朝5時に起床して1時間勉強。通学に1時間をかけ、午前7時過ぎに学校に着くと朝練習。そこから授業の予習を行い、放課後の2時間の練習を終えると帰宅後も勉強――というものだった。
もちろん受験へのプレッシャーの多寡や勉強時間の差こそあれ、下級生も基本的にはそれに準ずるスケジュールということになる。
「ただやっぱり、3年生が残ってくれたこともあって、下級生が現実的に都大路を意識できるようになってきていたんですよね。だから頑張れた部分はあったんだと思います。やっぱり、憧れの舞台に行けるかもしれないと思えば自主的にやりますから」
結果的に10月の記録会で、選手たちにはそれなりの記録が出そろった。ここで水原は「勝機あり」と感じたという。
「この頃には私も『五分五分ではあるけれど、本当に可能性がある』とかなり現実的に全国の舞台を思い描きはじめていました。ただ、生徒の前でそれを出すと、生徒も自分自身も浮足立ってしまうので(笑)。とにかく『まずは自分たちの走りをするんだよ』ということを言い続けていました」



