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アンタッチャブル柴田が絶賛「こんなアホ、初めて見た」“高学歴化”トレンドのM-1だからこそバッテリィズが愛された「生きるのに意味なんかいらんねん」
text by
ラリー遠田Larry Toda
photograph byM-1グランプリ事務局
posted2024/12/24 19:02
バッテリィズのエース(30歳、左)と寺家(34歳)。M-1初出場で準優勝を果たした
審査員のアンタッチャブル・柴田英嗣は、バッテリィズについて「こんなクリティカルなアホ、初めて見た」と語った。「critial(クリティカル)」とは「批評的な/決定的な」という意味である。まさにエースの言葉の端々には、無意識のうちに物事の本質を射抜くような批評的なところがあった。これがもう1つの魅力だ。
1本目の漫才で哲学者のソクラテスの名言を紹介しようとした寺家に対して、哲学者とは何なのかと尋ねて、「物事の本質を見極めるために生きるとか死ぬとかについてずっと考えてる人たちや」と説明されると、「働けよ! 生きるか死ぬか考えんで! そんな時間あるんやったら誰かのために働いてくれよ」と言い切り、次のくだりでは「考えすぎや。その人、呼んでこい。楽しませたるわ、俺が」と続けた。
漫才の最後では「こういう偉人の言葉とか参考にせえへんかったら、人間に生まれた意味ないで」と言われて、「生きるのに意味なんか要らんねん。もうええわ」と返して締めくくった。
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エースの発言は面白おかしいものとして聞こえる一方で、はからずも本質を突いていて一理あると思えたりもする。ある意味では、哲学者を批判する彼こそが誰よりも哲学者的な一面を持っている。この要素がバッテリィズの漫才に笑えるだけではない深い味わいをもたらしている。
オードリー若林の“名コメント”
さらに言えば、彼らの漫才の中にはエースの人間的な優しさもにじみ出ている。2本目の漫才の中で、昔の偉人の墓が大きいのはそれだけ偉大だからだという話をされて、自分の祖父の墓が小さいと言っていたエースは「俺のおじいちゃんもおもちゃいっぱい買ってくれたから! 俺のおじいちゃんも偉大やから!」と返した。その無邪気な一言は単に笑えるだけではなく、感動をもたらすようなところもあった。泣かせる要素はあるが、あざとさは全くない。この漫才におけるエースは「バカだけどめちゃくちゃいいやつ」という漫画の主人公のような理想の人物像を体現する存在だった。