Number Web MoreBACK NUMBER
「6年前、23歳のショウヘイとは違う…」エンゼルス1年目の大谷翔平を知る、ドジャース三塁コーチが独占告白「感情を出すショウヘイが大好きなんだ」―2024下半期読まれた記事
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byAFLO
posted2024/12/18 17:35
ドジャース大谷翔平とディノ・エベル三塁コーチ。エンゼルス1年目(2018年)から大谷を知るエベルコーチが独占取材に応じた
59盗塁を積み重ね、彼は自身が優れたベース・スティーラーだと感じられているはず。それはもうメジャー全体が気づいていることでもある。
試合前、翔平はビデオで相手投手の球と投球フォームを丹念に見ている。それが打撃だけではなく、走塁に影響しているのかどうかはわからないが、ストレングス担当コーチ(トラヴィス・スミス氏)と一緒に脚力を鍛え、ストレッチ、ジムでのトレーニングなどで走塁の準備はしている。それらの甲斐があって、盗塁だけでなく、翔平の総合的なベースランニングがレベルアップしたと私は評価している。
たとえば一塁から三塁にまで進塁する時、以前よりターンが上手くなったために距離のロスがなくなった。おかげで長打が出た時、一塁から長駆ホームインできる。
ADVERTISEMENT
翔平の走塁のスピード自体はエリートレベルではないというデータもある? たとえそうだとしても、これだけ盗塁できた理由にはインスティンクトの良さが挙げられる。周囲の状況に気づいていて、センスがあり、野手の肩の強さなどもしっかり把握している。ゲームの流れも見えているから、走るべき時とそうではない時をよくわかっている。すべては状況判断の良さからきているのだろう。もともとの勘の良さに、先ほども話した走塁時のアングルの向上、経験と鍛錬から来る自信などが加わり、翔平はより優れたベースランナーになったんだ。
「三塁で何を話している?」
翔平が三盗に成功した時、三塁コーチの私が真っ先に言葉を交わすことになるわけだが、何か特別なことを話すわけではない。私の方は「グッジョブ、グッジャンプ(Good job, good jump)」と声をかける。「何か癖が見えたのか? あれはカーブが来ると思ったのか?」と尋ねたこともあるが、彼は「いや、ただ走っただけだよ」といった感じで、盗塁成功の振り返りには興味を示さなかった。
誰かが三盗した時には私はいつでもその成功を讃えるが、翔平が何かを言うことはほとんどない。私が「内野陣は後ろに下がっているよ」「ここではコンタクトプレー(=打った瞬間に三塁走者は走る)だ」といった指示を出し、翔平は「OK」と答え、次のプレーに移っていく。盗塁を成功させた瞬間、彼はもう気持ちを切り替えている感じがする。
「6年前のショウヘイとここが変わった」
今季、そんな翔平と一緒に続けてきたことがある。