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「高校生の大谷翔平が泊まったことも」「地下室でボールの弾み具合を…」“非公開”の高校野球本部「中沢佐伯記念野球会館」には何がある? 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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photograph byPENTA PRESS,JIJI PRESS/Kou Hiroo

posted2024/08/12 17:01

「高校生の大谷翔平が泊まったことも」「地下室でボールの弾み具合を…」“非公開”の高校野球本部「中沢佐伯記念野球会館」には何がある?<Number Web> photograph by PENTA PRESS,JIJI PRESS/Kou Hiroo

高校時代の大谷翔平も泊まったことがあるという「中沢佐伯記念野球会館」。一般には公開されない“ナゾの施設”には何がある?

「1969年竣工後から、合宿時に宿泊施設として活用していました。コロナ禍までは使用していましたが、それ以降は使用していません」

 夏の甲子園が終わると、日米親善高校野球大会や、WBSC U-18ワールドカップなどの国際大会のために、甲子園で活躍した選手を中心に選抜チームが組まれる。甲子園ではライバルとして競い合ってきた彼らは「野球会館」で文字通り「同じ釜の飯」を食うことで、同世代としての連帯感を培ってきたのだ。

 現在、ロサンゼルス・ドジャースで活躍する大谷翔平もこの宿泊施設に泊まったという。

 甲子園の緊張から解き放たれ、1人の高校生に戻った彼らの共同生活は、修学旅行のようで、さぞや楽しいものだっただろう。彼らはここから壮行試合に出場し、国際大会に出発した。

 高校時代から活躍してきたエリート選手にとって「野球会館」での合宿は、忘れがたい思い出になったはずだ。

地下室ではボールの弾み具合が測定されている

 地下には、喫茶店を想定した、厨房やリフトなども備え付けてあるスペースがあった。喫茶店は実現しなかったが、会議、記者会見、合宿などで活用されていた。それ以外にもこの地下室は、今も高校野球の運営のために、重要な役割を担っている。

「春、夏の甲子園」で使用するボールは、この地下室で、審判員が1つ1つ弾み具合を測定して選別しているのだ。

 日本高野連のホームページで、8月7日に開幕した夏の甲子園で使用する180ダース(2160個)のボールの弾み具合や重さ、形状を審判委員がチェックしたことが紹介されている。

 円周の測定や、縫い目、形状のチェックに加えて、地下室内のバルコニーの高さ4mの位置に設置された反発測定器からボールを落下させ、大理石の床面に跳ね返る高さを目視して、可否を決めている。基準とする高さに満たなかったり、基準を大きく超えたボールは「アウト」と宣して除外していく。

 なお7日の開会式で、日本高野連の寶馨会長は、大会使用球を手にして「これは、大会の使用球です。ボールのほうは、反発は変えていません。4メートルの高さから大理石に向かって落下させて、1.4メートルの反発のボールを使っています。先月、審判委員の皆さんがチェックをしてくれました。1球1球、愛情を込めて確かめてくれました。この白球を大切にしてください。一つひとつのプレーを大事にしてください」と挨拶をした。

春には桜の花見に集まってこられます

 こんな「手作り」の作業が今も地道に行われているとは、驚くしかない。

「野球会館」の庭には、この会館の名称の元となった中沢良夫、佐伯達夫、二代の日本高野連会長両氏の胸像が置かれ、野球関連のモニュメントもある。

 庭を案内しながら、井本事務局長はこのように話していた。

【次ページ】 “7回制報道”や酷暑対策の2部制を推し進める中で

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大谷翔平
井本亘
中沢佐伯記念野球会館

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