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競泳・瀬戸大也(30歳)が「五輪参加条件」未達でも400m個人メドレー決勝進出のナゼ…“本番”200m個人メドレーで期待ができる「納得のワケ」
text by
田坂友暁Tomoaki Tasaka
photograph byRyosuke Menju/JMPA
posted2024/07/30 17:02
代表選考会で派遣標準記録を突破できなかった瀬戸大也だが、400m個人メドレーに出場し7位入賞。そのワケは?
瀬戸を含めた上記選手たちに共通するのは、すべて「選考会で選ばれたメイン種目の前に行われる種目に限ってエントリーしている」ことである。
直近の例で分かりやすいのは、2023年に日本・福岡で開催された世界水泳選手権の鈴木聡美である。
鈴木は派遣標準記録を突破して出場権利を獲得していたのは50m平泳ぎのみ。だが、実際には100m平泳ぎにも出場。100mで派遣標準記録を突破して代表権を獲得していた青木玲緒樹を上回る記録を本番で叩き出し、予選・準決勝を突破。メダルには手が届かなかったが、予選では自己ベストを実に14年ぶりに更新する。勢いそのままにメイン種目である50m平泳ぎでも自己ベストを更新し、決勝で7位入賞を飾った。
さらに大会時の100mの記録が青木より上回っていたことにより、調子の良い選手を出すということで、最終日のメドレーリレーのメンバーとして泳ぐことにもなった。
上記を冷静に見てみると、本来、鈴木は100m平泳ぎとそれに伴うメドレーリレーを泳ぐ権利はなかったはずだ。だが、実際にはエントリーし、泳ぎ、結果を残している。
なぜ、このようなことが起こるのか。
メイン種目の「より良い結果」に繋がるなら…
それは、単純にぶっつけ本番でメインレースを迎えるよりも「一度会場の雰囲気やレースの感触を得ていたほうが、メイン種目で良い結果を残せる可能性が高まる」と代表チームが判断したからである。
事実、昨年の世界水泳選手権では、鈴木は100mに出場することで自分が好調であることを確認。さらに、地元福岡で受ける歓声の大きさも100mで体感することができていたので、メイン種目である50mでも落ち着いて結果を残すことができた。
今回の瀬戸も、そして松山、谷口、小堀らにも同じことが言える。特にレースを重ねれば重ねるほど身体のキレが増し、気持ちも高まってノッていくタイプの瀬戸ならなおさらだ。
ただ、あくまで瀬戸の“メイン種目”は200m個人メドレーである。しかし、ぶっつけ本番で200mだけに出場するよりも、事前にレースに出ておいたほうが“メイン種目”で結果を残せる可能性を高めることになるならば、一度レースを泳いでおいたほうが良い。