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「仕事は?家はどうするの?」原晋の監督就任に妻は猛反対した…広島有名企業のサラリーマンを青学大の指導者に変えた“一本の電話”
posted2024/01/03 06:00
text by
原美穂Hara Miho
photograph by
AFLO
今年も箱根駅伝が開幕する。前回大会で駒澤大に王座を明け渡した青山学院大は、どのような逆襲の走りを見せるだろうか。
原晋監督、そして学生たちを支えるのが、寮母を務める原美穂さんだ。寮母という立場から青学の強さの秘密を解き明かす、原美穂さん著『フツーの主婦が、弱かった青山学院大学陸上競技部の寮母になって箱根駅伝で常連校になるまでを支えた39の言葉』(アスコム刊)から、「夫が青学監督になった日」に関する章を抜粋して紹介します(全3回の1回目/#2、#3につづく)。
原晋監督、そして学生たちを支えるのが、寮母を務める原美穂さんだ。寮母という立場から青学の強さの秘密を解き明かす、原美穂さん著『フツーの主婦が、弱かった青山学院大学陸上競技部の寮母になって箱根駅伝で常連校になるまでを支えた39の言葉』(アスコム刊)から、「夫が青学監督になった日」に関する章を抜粋して紹介します(全3回の1回目/#2、#3につづく)。
◆◆◆
夫が監督になると決めた日のことは、今でもよく覚えています。
揃って、車で出かけていたときのことです。運転していた夫の携帯電話が鳴りました。夫は車を停めて電話で話し始めます。わたしは横で夫の声だけを聞いていました。最初は「へえ、そうなんだ」といった調子で相づちばかりを打っていましたが、そのうち、「それは断らないでしょう」「やるしかないでしょう」などと言い出しました。いやな予感がふくれあがっていきます。
電話をかけてきたのは、夫の高校時代の陸上部の後輩で、瀬戸さんという人です。瀬戸さんは世羅高校を卒業後、青山学院大学に進み、広島へ戻って中国放送に就職していました。中国放送も、中国電力に負けないくらいの、地元の超優良企業です。
その瀬戸さんからの電話を受けた夫は、瀬戸さんに、何かを断るな、何かをやれ、と言っているようにも聞こえるのですが、わたしにはわかります。要するに、瀬戸さんに事情があってできないその何かを、自分がやりたいと言っているのです。
瀬戸さんが電話をかけてきた理由、それは、瀬戸さんが、母校である青山学院大学から、箱根駅伝出場を目指して駅伝の監督に就任してほしい、と要請されたことを知らせることでした。