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ダルビッシュに直接聞いた“尊敬される人間になるには…?” 佐々木朗希・山本由伸は“先輩の器”をこう見ていた「同じ目線で話してくれる」
posted2023/03/29 11:04
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
Getty Images
WBC期間中、侍ジャパンの若い投手たちは常に「思考」していた。
自分たちの取り組みを尊重してくれる人物がいたから考えるようになった、とも言えるだろう。
「ダルビッシュ(有)さんは年下の選手にも同じ目線で話してくれています。そこで僕の意見を言ってまたそれに対する意見をもらったりするので、自分がいつもどういうふうに考えていたのかが分かりました」
“令和の怪物”として昨季は完全試合を達成し、WBCの準決勝戦でも好投を見せた佐々木朗希(ロッテ)のコメントである。
WBC日本代表“リアルな雰囲気”
日本人は年上に自分の意見を言うことに慣れていない。
意見を聞かれ発言をすることがあっても、その内容を質され、修正を余儀なくされることも少なくない。「お前がその取り組みをやめない限り、試合で使わないからな」。そうしたやり取りを小・中、そして高校年代までの間に経験し、やがて自分の意見を封じ込める。
SNSで意見を発信することができるようになった現代においても、ことアスリートに限っては、何か意見を言おうものなら「そんなことをしている時間があったら、練習しろ」と罵声を浴びせられる。その結果、アスリートの大半が黙るしかなくなる。
しかしそのような空気は、WBC直前に行われた宮崎キャンプでは全くなかった。若い選手たちがのびのび意見を言えるような環境が備わっていたからだった。
この雰囲気を作った人物こそ、メジャーリーガーで唯一合宿から参加していたダルビッシュだった。
「自ら聞いて回る」ダルビッシュの姿勢
ダルビッシュは合宿当初から自分が合宿からいることの意味をこう話していた。
「ずっと日本にいるとなかなか最新の情報が得られないこともあるので、そういうのをしっかり情報共有してお互い成長していけたらなっていうふうに思っています。勝ち負け以外の部分では、そういうこともできればと」
ただ、ダルビッシュは「アメリカはこうだ」という物言いはしなかった。とはいえ「気になることは聞きにこい」という態度でもない。あくまで自分から若い選手たちに話しかけ、耳を傾けた。
合宿に参加する前にYouTubeなどで全選手のプレーぶりを動画でチェックした上で、各選手たちに考え方を聞いて回ったのだった。