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フィギュアルール改正で選手への影響は…日本人ジャッジが解説する「なぜ変更が必要なのか?」年齢制限の懸念は“年の差パートナー問題”
posted2022/10/02 17:00
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph by
Asami Enomoto/JMPA
2022年6月、タイのプーケットで行われた第58回ISU総会で、2026年ミラノ・コルティナオリンピックへの新たな4年に向けて、いくつかの大きなルール改正が決議された。
ISUのペアとシングルの技術委員であり、レフリー、技術コントローラーの資格も持つベテランジャッジ岡部由起子さんに、主なルール改正について説明してもらった。
5コンポーネンツが3コンポーネンツになった理由
「今年の6月のISU総会で決まったルール改正の中で、最も大きなものは恐らくコンポーネンツが3つになったことだと思います」
岡部さんがそう指摘する。
コンポーネンツは日本語では演技構成点とも呼ばれ、旧採点方式では「芸術点」あるいは「表現点」とも呼ばれていた部分を細かく分類したものだ。
昨シーズンまでは、「スケーティング技術」「トランジション(つなぎ)」「パフォーマンス」「コンポジション(構成)」「音楽の解釈」の5項目だった。
それが今季から3項目に減らされた。その主な理由は何なのだろうか。
「もっとも大きな理由は、ジャッジの負担です。つねにより正確な判定をということを目指してやっているのですが、これまで5コンポーネンツをうまく使いこなしているジャッジもいれば、そうでもない、苦心しているジャッジの方もいたというのが現実でした。瞬時の間に、各エレメンツ(ジャンプ、スピン、ステップなど)にGOEをつけ、さらに5項目の採点をするというのは人間の能力の限界を超えている、という声も上がっていました。よりわかりやすく、点数をつけやすくしたというのが主な理由です」
シンプル化=採点の正確性につながる
現在の採点方式は、技術パネルとジャッジパネルの分担作業になっている。
例えばある選手が4回転ルッツを跳んだが、着氷が乱れたとする。ジャンプの回転が足りていたのか、正しいエッジでテイクオフしたのかを判断するのは技術パネルの役割。そして4Lzと表記されたこの技に、プラス5からマイナス5までの評価をつけるのがジャッジの役割だ。
ジャッジたちは限られた時間内に、男女シングルはSPで7個、フリーで12個の技にGOEを加え、さらにコンポーネンツを10点満点で評価しなくてはならない。
世界選手権では、男女シングルそれぞれ30人以上の選手が出場する(フリー進出はSPトップ24人のみ)。競技進行全体を監督するレフリー、制限時間、さらにメディアと観客の目という複数のプレッシャーにさらされながら、ジャッジたちは採点作業を行っている。その作業を少しでもシンプル化して、採点の正確性を増すために5コンポーネンツが3コンポーネンツに減らされたのだという。