「ドラフト候補と報道していただいたことはありがたかったですが、自分がプロで活躍できるとはまったく思いませんでした。プロは入団がゴールではなく、活躍して意味がある。同時代の大学野球界には、後にプロで2000本安打を達成する選手（稲葉篤紀の他に、小久保裕紀（青山学院大学）、井口資仁（同））など、優れた選手がたくさんいました。彼らのような選手がプロで活躍するんだろうな、と思っていました。私が4年生のときに、慶應大に入学した高橋由伸（元読売ジャイアンツ）が木製バットで深々と右中間に放り込むのを見て衝撃を受けたのもよく覚えています。そういう点で、プロに進むかの選択に迷うことはなかったです」

1994年のドラフト候補（一部）。本文中の稲葉篤紀（法大→ヤクルト3位）のほか、福盛和男（都城高→横浜3位）、城島健司（別府大付高→ダイエー1位）、丸尾英司（仏教大→オリックス2位）、入来祐作（亜大→本田技研に入社後、2年後に巨人1位）らがいた　©KYODO

　ただ、そのようなトップクラスの選手と戦うことで、その後の人生観や仕事観に影響を受けたと片山は話す。

「当時の東大野球部は奇襲作戦や小技を使うというよりは、真っ向勝負で勝ちにいくスタイル。他大の有力選手のレベルに、個人・チームとしてどう対抗するかと考えながら4年間ずっと過ごしてきました。トップのレベルを嫌でも意識し、そこで如何に互角に渡り合えるかを考え抜いてきたことは、その後の仕事に取り組む姿勢にも活きていると思います」

　4番としてチームを引っ張り、トッププレイヤーと対峙してきた東大のスラッガー。後編では、野球部の経験を踏まえて卒業後にどのような人生を歩んでいるのかを聞いていく。

＜続く＞