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左手骨折でも“超高難度技”トリプルアンダーフリップに挑戦…スノボ岩渕麗楽が明かしていた自らのメンタル「精神的に終わりがない感じでした」
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byLee Ponzio
posted2022/02/16 11:03
岩渕麗楽(Reira Iwabuchi)2001年12月14日、岩手県生まれ。4歳からスノーボードを始め、'17年12月に15歳でW杯ビッグエアを制す。平昌五輪ビッグエア4位、スロープスタイル14位。今季は12月のW杯でビッグエア優勝。150cm
720、900、1080……回転角度を表す数字は、女子では3回転半の1260まで達し、男子はすでに5回転半の1980までいってしまった。
平昌ではまだ1080が女子最高難度で、岩渕はこれを決められずにビッグエアで惜しくも4位に終わった。
ところが、4年の間に早くも1080は決めて当然の技となり、当然、岩渕もその先を目指した。
「まず初めはバックサイド1080をやり込んで、その技に余裕を持たせることを意識しました。体幹トレーニングにジャンプ施設での反復練習を積んだ上で、今度は雪山で自信がつくまでやりました。一番効果的だったのは回数をこなしたことかな」
果てしない開発競争は彼女のメンタルをすり減らしていった
昨年12月のビッグエアW杯ではバックサイド1260を決めて優勝。この4年間で格段にレベルアップしたのは間違いないが、果てしない開発競争は彼女のメンタルをすり減らしていった。
「オフシーズンの間に練習で新しいことを身につけても、上には上がいて全然追いつけていない感覚になってしまったんです。やってもやっても課題がどんどん出てきて、達成感がない。精神的に終わりがない感じでした」
それでも負けずにまだ上を見ている。
「1260は今の女子の最高難度に近い技ですが、これをできる選手は何人かいるので、必ず決めなきゃいけない技だと思ってます。それプラス何かが必要だろうと」
岩渕自身は「低回転でスタイルを出すのが好き。シンプルな技の方が自分には合っている」と考えているが、ここから先の上積みは、さらに回転数を増していくことなのか、もっと別の方向にあるのか。
「これまでは海外の選手と比べてエアの迫力が足りなかった。そこを課題にしてきたので、エアの大きさに注目してもらえるとうれしい。あとはできるだけカッコよく滑れるように頑張ります!」
何よりも結果がモノを言う、コンテストの極致ともいえる五輪。16歳で何も考えずに挑めた前回より不安は大きい。ただ、それは彼女が必死に自分を追い込み、乗り越えようとしてきた4年間があるからだ。
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