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実家は総資産6500億円の大富豪…なぜ“テニス界一のお嬢様”ペグラは過酷すぎるツアー生活を続けるのか?
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byGetty Images
posted2022/01/29 11:03
アメリカ女子テニスのナンバーワンにして、“テニス界一のお嬢様”ジェシカ・ペグラがGS自己最高となるベスト8入りを果たした
今回、準々決勝進出を決めた試合のあとの記者会見でこんな話をした。
「うちがビルズを買ったときに、スタジアムのあちこちを見てまわったの。そこにはトレーニング施設があって練習用のグラウンドがあって、ジムのほかに個別のトレーニングルームなんかもあって、専属のシェフもいる。こんなの不公平だわって思った。私たちテニスプレーヤーは常に旅をしながら、毎週毎週違う環境で戦わなきゃいけない。自分の力でこなさないといけないことが山のようにあるわ。それがスポーツの中でもテニスが際立つところだと思う」
両親の成功とは違う成功への欲望、さまざまなマネージメント力が求められるツアーでの生活そのものが、ペグラの原動力のようだ。
富豪の令嬢からスラム街出身のウィリアム姉妹まで
ペグラほどではないにしても昔から富豪の子息や令嬢の活躍が珍しくないテニス界。2014年の全仏オープン・ベスト4のエルネスツ・グルビスの父親は投資家で母親は映画女優だそうで、一家はラトビアで3番目の金持ちと言われている。古くは80年代に活躍したカナダのカーリン・バセットの父が、かつてあったアメフトリーグ『USFL』のタンパベイ・バンディッツの筆頭オーナーだったほか、いくつものスポーツチームのオーナー権を所有していたという。
親が企業の社長や政治家といったレベルならおそらく枚挙にいとまがない。そしてその対極のグループには、コンプトンのスラム街出身のウィリアムズ姉妹や、わずか700ドルの現金のみで子供のときに父とロシアからアメリカへ渡ってきたマリア・シャラポワなどがいる。激しい紛争地域から這い上がってきたノバク・ジョコビッチもそうだろう。そう、この偉大なチャンピオンたちのハングリー精神と凄みはこんなテニスの世界だからこそ生まれたものに違いなかった。