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実家は総資産6500億円の大富豪…なぜ“テニス界一のお嬢様”ペグラは過酷すぎるツアー生活を続けるのか? 

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山口奈緒美

山口奈緒美Naomi Yamaguchi

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posted2022/01/29 11:03

実家は総資産6500億円の大富豪…なぜ“テニス界一のお嬢様”ペグラは過酷すぎるツアー生活を続けるのか?<Number Web> photograph by Getty Images

アメリカ女子テニスのナンバーワンにして、“テニス界一のお嬢様”ジェシカ・ペグラがGS自己最高となるベスト8入りを果たした

「昔の私は、自分自身の名前で生きたいと思っていたけれど、結局家族の名前から逃れられないとわかっていたから苦痛だった。年をとるにつれて、家族も含めての私なんだと考えられるようになって、その中の一人であることを受け入れながら、私は何か違うものになりたいと思うようになった。そういう考え方ができるようになったら、環境を楽しめるようにもなったわ。テニスは私のもので、私の仕事で、私の人生。家族とは完全に切り離されたもので、両親はテニスに関して今は何も言わないわ」

ジェシカよりも凄かった“母の激動すぎる人生”

 そんなジェシカの風貌にどこかアジアの雰囲気があると思えば、やはり母が韓国出身だった。出身といっても、その人生を知って驚いた。5歳のときにソウルの路上に捨てられていたところを保護され、海を渡ってアメリカ人夫妻の養子になったというのだ。そして大学時代にウエイトレスのアルバイトの面接を受けていたレストランで、食事中だったテリー・ペグラに声をかけられ、彼が経営する会社で働くようになった。その2年後にテリー氏の再婚相手となる。 

 激動の人生は、ジェシカが2015年の全米オープンで予選から勝ち上がって本戦の1回戦も勝利したときに、韓国の中央日報でも報じられた。しかしキムに韓国での記憶は何ひとつなく、血のつながりのある両親の手がかりも一切ないとされている。ただ、DNA鑑定の結果、両親の一人は日本人の可能性が高いという記述がいくつかの海外メディアによる報道にあった。確定された事実ではないとはいえ、まさかテニス界一のご令嬢と日本とに、そんな繋がりがあるとは思いがけないことだった。

 キムは単なる社長夫人やオーナー夫人の椅子におさまるだけではなく、夫とともにあらゆるビジネスに深く関与し、発言力を持つ立場だというが、そんな母親は7年前に長女のジェシカについてこう語っている。

「どうしてこんなことを続けているのかしらと不思議だった。家族の生活を賞金で支えているというテニス選手は多いけれど、あの子は違うわ。お金の心配なんかないんだし、テニスをしなければもっと楽に人生を送れるはずよ。でも彼女はテニスが大好きで、まったく自分の力でテニスをやり通してきたわ」

「専属のシェフもいる。こんなの不公平だわって思った」

 自力といっても、初期投資の段階でいいコーチをつけられるとか多くの大会で経験を積めるとか、裕福すぎる家庭の子供としてアドバンテージはもちろんある。だからといって世界21位までになるのは特別な才能の証だし、韓流ドラマにもまさる劇的な母親の生い立ちは、娘の強烈な自立心にも影響を与えたのかもしれない。

【次ページ】 富豪の令嬢からスラム街出身のウィリアム姉妹まで

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