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落合博満「努力とか大嫌いさ、あんなの」「1600万円しかもらってませんから」 ロッテ時代の強烈な《三冠王語録》の真意
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byKyodo News
posted2021/11/08 11:01
1983年2月の落合博満。“練習嫌い”だったとはいえ、練習の質は群を抜いていたという
年俸という分かりやすい数字こそ、世間的にインパクトを残す。この年のオフ、落合は年俸5400万円と大幅アップを果たした。そして日本人初の1億円プレーヤーとなったのは、その4年後。3度目の三冠王を獲得し、中日へと電撃トレードされる1986年オフのことだった。
今年はヒットを打てるんだろうか、と本気で思う
<名言2>
今年はヒットを打てるんだろうか、と本気で思う。
(落合博満/Number66号 1982年12月20日発売)
◇解説◇
「打率が2割ぐらいでいいなら、ホームランは60~70本はいける」
「挫折なんてことを考えたこともないよ」
2020年代の今なら《ビッグマウス》として、大々的に取り上げられそうな発言――28歳にして落合は残している。そういった言葉がややもすれば不遜にも映ったのかもしれないが、インタビューを読んでみると、彼が持つ二面性にも気づかされる。
「野球選手というのは、すごく両極端な性格の持ち主なもんですよ。気が強い面があるかと思うと、まるっきし気の弱い面がある。ぼくもそういうところがあるね。毎年、開幕試合の前になると……」
このように語った後、冒頭の言葉を発したのだという。
「ま、1本出れば、ああ大丈夫みたいな気持ちになるけど、1本出るまでのプレッシャーというのは大変なもんですよ」
大胆さと繊細さ。2つの心情を絶妙にコントロールし、融合していたからこそ、落合は偉大なバットマンとして君臨し続けることができたのだろう。
「努力や練習が大嫌い」だとしても
<名言3>
努力とか大嫌いさ、あんなの。
(落合博満/Number154号 1986年8月20日発売)
◇解説◇
1986年シーズン、セ・パ両リーグにはそれぞれ三冠王へと邁進するスラッガーがいた。セは阪神のランディ・バース。前年には掛布雅之・岡田彰布との強力クリーンアップで猛虎を日本一に導いたが、この年は日本タイ記録の7試合連続本塁打を放つなど、最強の外国人バッターとしての座を確立していた。
そしてパでは、落合が前人未到の「三度目の三冠王」に向かおうとしていた。
三冠王を狙うためには「卓越した打撃技術を持ったうえで、試合に出続けること」が求められる。バッティングのメカニズム、肉体のコンディションいずれかが崩れても厳しくなることを踏まえれば、練習や努力は肝心要のはずだが……それを「嫌い」と言い切ってしまうのが落合らしい。
日本人の悪いクセで……予防線というのかな
ただし落合は、《嫌い》と《やるかやらないか》は別次元のことだと認識していたようだ。このようにも語っている。