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ロッテ福田秀平が絶対に優勝したい理由 12年前に誓った“2人の父”との約束
text by
田中大貴Daiki Tanaka
photograph byKyodo News
posted2020/10/19 06:00
若手選手たちにも刺激を与えている福田の存在。終盤戦へ向けて、彼の「勝者のメンタリティ」はより重要となる
どう働き、どう準備するか
今季の福田秀平の行動を見ていると「日本一を経験してきた選手」だという事を感じさせる。
怪我から復帰後、本塁打を放っても決して笑顔を見せなかった。このレベルでは自分の働きに納得してもらうことはできない。「勝負はこれから」と若手に声を掛け、ベンチを乗り出し、声を出す。ベンチだけでなく、ロッカールームでの振る舞いも「優勝するチーム」のムードを作り出そうとしている。
「勝ちを求めるチームはロッカールームでの行動、言動も納得できるものがある。勝つために何を話し、どう動き、どう準備するかを常に考えて動いている」
福田が肌で感じてきた“常勝ホークス”での経験は、ロッテの若手選手たちにも刺激を与えている。
今季から主軸を任される安田尚憲がチャンスをもらった時やミスした時に一番に声を掛けに行く福田の姿を何度も見てきた。安田だけでなく、和田康士朗や藤原恭大ら多くの若手選手がベンチでは福田の近くに座り、福田イズムを学んでいる。
12年前、鳥越コーチとの約束
彼にはどうしてもロッテで優勝したい理由がある。
「ロッテへの入団を決めたのは鳥越さん(裕介/一軍ヘッド兼内野守備コーチ)がいたからでした。19歳の時、(ソフトバンクの二軍時代を過ごした)雁の巣球場のベンチ横で鳥越さんと一緒に泣いたことを今でも覚えています。僕が父親を亡くした同じ時期に、鳥越さんは奥様を亡くされました。
大学、社会人と野球を続けてきた父は僕に野球を教えてくれた人でした。でも、お酒を一緒に飲むこともなく、プロでの活躍を見せてあげることもできず、天国に逝ってしまいました。あの時、鳥越さんはホークスの二軍球場で一緒に泣きながら『諦めず絶対に生き抜いて、活躍して、天国のお父さんに恩返しをしよう』と言ってくれました。
若き日の僕にとって、鳥越さんは指導者でもあり、父のような存在でもあったんです。鳥越さんには野球の技術だけでなく、ベンチやロッカーでの立ち居振る舞いもホークス時代に教えてもらってきました。また鳥越さんと一緒に闘いたい、一緒に優勝したいと思い、ロッテを選ばせてもらいました」
天国にいる父と、ともに闘う父のような存在である鳥越コーチ。いま、福田は2人の父に見守られている。