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三浦隆司の左が炸裂、内山高志が
ダウン。しかし見えた“勝ち筋”。
posted2020/07/14 11:05
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Hiroaki Yamaguchi
日本人同士の“強打者対決”となった2011年の世界タイトルマッチを振り返る特集、全3回中、2回目の記事です。
第1回「内山高志×三浦隆司の強打者世界戦。KO必至の試合前、右拳を痛めた王者」、第3回「内山高志、TKO勝ち。両目とも腫れ、視界がない三浦隆司が「もう無理」」は記事最終ページ下にある「関連記事」からご覧ください。
第1回「内山高志×三浦隆司の強打者世界戦。KO必至の試合前、右拳を痛めた王者」、第3回「内山高志、TKO勝ち。両目とも腫れ、視界がない三浦隆司が「もう無理」」は記事最終ページ下にある「関連記事」からご覧ください。
やべっ。
2ラウンド、反射的に飛び出した右ストレートが三浦隆司の頭を捉えた。激痛が走ったのはチャレンジャーではなく、パンチを放った内山高志のほうだった。
それでも表情は平然と、胸の奥に隠す心の顔だけをしかめた。
「めちゃくちゃ痛かったですよ。だけど痛いから、右をもう出さないっていうわけにもいかない。しかしこれが軽く打ってもどうしようもなく痛い(笑)。(拳を)握れていないから、あれじゃパンチが効くわけない。それでもバレないためには右は出さなきゃいけない」
想定内ゆえにパニックになることもない。
トレーナーに小声でつぶやいた。「右、ダメだわ」
元々「まあ何とかなるっしょ」という楽観的な性格。何が起こったとしてもマイナス思考に支配されることはない。
左ジャブの打ち終わりに右フックを合わされそうになったシーンがあった。相手陣営から「いいよ、それだよ!」の声が聞こえたという。
「ジャブを打つとそのまま(腕が)落ちるクセがあって、右フックを返す練習をしてきたんだなって分かりました。ブンッてきましたからね。これを狙っていたのか、危ねえって。逆にナイスアドバイスって心のなかで声を上げましたよ」
距離を取り、ジャブの打ち終わりに注意を払う。右を痛めた気配をまったく見せずジャブでコントロールを続け、ラウンドの支配を緩めることはなかった。
コーナーに戻った内山は佐々木修平トレーナーに小声でつぶやいた。
「右、ダメだわ」