ボクシングPRESSBACK NUMBER
三浦隆司の左が炸裂、内山高志が
ダウン。しかし見えた“勝ち筋”。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byHiroaki Yamaguchi
posted2020/07/14 11:05
偶然のバッティングで流血した内山(左)に襲い掛かる三浦。厳しい状況のなか、内山は冷静に勝つためにやるべきことを整理していた。
「やるべきこと」を頭のなかで整理していた。
三浦はこの左ストレートにすべてを注ぎ込んできた。日々の練習で打ちまくってきた。
イチかバチかなら、ここしかない。
再開の合図と同時に前進してまたも左ストレートを浴びせる。
しかしクリンチをほどいて右、左をぶん回したところで勢いあまって転んでしまう。
「もうなりふり構わず、当ててやろうって思いました。チャンスを逃がしたくないっていうその思いだけでした」
ラウンド終了を知らせるゴングが鳴る。内山はしのぎ切ったという思い、三浦はチャンスを逃がしたという思い。内山がいくら楽観的なキャラクターであるとはいっても、こんな苦境なかなかない。
使えない右拳、初めてのカット、そして序盤のダウン、言わば苦境の三重奏。
しかし三浦が言うように、内山の目は死んでいなかった。むしろ情報をすべてインプットしたとばかりにコーナーでは「やるべきこと」を頭のなかで整理していた。
「三浦の右目が2ラウンドくらいから赤くなっていたんで、目を腫らしていこうと(セコンドとは)そういう話になりました。それで十分いける、と。右フックよりも怖いのはあの左ストレート。ビッグパンチに気をつけて右のガードを絶対に下ろさない、と」
左だけでコントロールして、徹底してヒット&アウェーで勝ち切るしかない。追い込まれているはずなのに“勝ち筋”がはっきりと見えていた。