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ホンダが再開するF1で目論むこと。
「撒いた種が今年は花を咲かす」 

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尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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photograph byGetty Images

posted2020/06/23 20:00

ホンダが再開するF1で目論むこと。「撒いた種が今年は花を咲かす」<Number Web> photograph by Getty Images

昨年はホンダにとって13年ぶりの優勝を果たしたオーストリアGP。ゲンのいいサーキットでの再開幕に期待が高まる。

ホンダにとっては収穫の年だった。

 ウイルス感染の恐怖におびえ、将来に不安を感じながら生活を続けている世界中の人々と同様、F1再開の目処が立たない時期には、レース関係者も不安な日々を送っていた。

「オーストラリアから帰国後、自宅で自粛生活を送っている中、ヨーロッパでの感染状況が悪化の一途をたどり、レース中止のニュースが次々と発表されたときは、『もしかしたら、今年はこのままレースができなくなるんじゃないか』って。

 われわれが撒いたひまわりの種がようやく芽を出し、昨年大きく成長し、今年はいよいよ花を咲かせようとしていた。それなのに、その花が開く直前でそれを見ることができなかったら、嫌だなあ、悔しいなと」(山本)

日本GPもやむなく中止。

 そして6月12日には、10月に予定されていた2020年のF1日本GP開催中止が発表された。

「日本GPについては、いろんな要因があったと思います。

 ひとつは、現段階ではまだ数万人という規模のお客さんを入れて、イベントを行う状況ではなかったこと。たとえ無観客でやるとしても、F1関係者だけでも2000人近い人たちが海外から日本を訪れます。その人たちを日本が受け入れる態勢が整っていなかった。さらにレースを開催するには大勢のオフィシャルも必要となり、そうなるとどうしても3密状態が生まれてしまいます。

 もちろん、日々刻々と感染状況は変わり、日本GPが開催される予定の日までに状況が改善されるかもしれませんが、船便の手配やほかのグランプリ主催者との関係もあるので、F1側もいつまでも待っているわけにはいかなかったんだと思います」(山本)

 日本GP中止が発表されたその日に渡英した山本は、到着したロンドン・ヒースロー空港のいままで経験したことがないほどの閑散ぶりに、コロナ禍の影響の大きさをあらためて実感。中止というFIAの判断もやむを得なかったと納得するしかなかった。

【次ページ】 新しい日常を採り入れたF1。

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山本雅史
ホンダ

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