F1ピットストップBACK NUMBER
ホンダが再開するF1で目論むこと。
「撒いた種が今年は花を咲かす」
posted2020/06/23 20:00
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Getty Images
6月12日、ホンダF1のマネージングディレクターを務める山本雅史が日本を発った。出発した羽田空港は山本が乗る便以外、ほとんどの航空会社のカウンターが閉鎖されたまま。山本と一緒に搭乗した30人程度の乗客も、その半分は外国人だったという。
山本が向かったのは、イギリス・ロンドン。再び開幕するF1に参加するためだ。
ただし、事実上の開幕戦となるオーストリアGPがはじまるのは7月。約3週間も前に渡英したのは、イギリスが入国者に対して入国後14日間の自己隔離を要請しているからだ。さらにF1側のルールとして、開幕戦の舞台であるオーストリアへの移動はヨーロッパ内からチーム単位で行うことになっているため、まずホンダがパワーユニットを供給しているレッドブルのファクトリーがあるイギリスへと向かったのである。
山本が自粛生活を送るのは、これが初めてではない。3月13日に開幕寸前で中止となったオーストラリアGP後にも経験した。
「オーストラリアから帰国した後、会社の規定で14日間、自宅で自主隔離生活を送っていました。もともとホンダは在宅勤務推奨というシステムがあり、緊急事態宣言が出る前からどうしても出社しないとできない作業以外は基本在宅での勤務を開始していたので、私も在宅でテレワークしていました」(山本)
イギリスも栃木もストップ。
その後、新型コロナウイルスの感染拡大がヨーロッパを中心に世界各国で深刻な状態となっていったため、F1はオーストラリアGPに続いて、6月までのレースを段階的に中止あるいは延期とした。あわせて通常は夏に実施しているファクトリー閉鎖期間を、レースが延期されている3月から4月に前倒しした。
さらに国際自動車連盟(FIA)は昨年までチームだけだった閉鎖対象を、3月下旬になって、パワーユニット・マニュファクチャラーにも拡大することにした。
これにより、ホンダがイギリスに構えているHRD UKは3月30日から5月15日までファクトリーを閉鎖。日本の栃木県さくら市にあるHRD Sakuraもゴールデンウィークの少し前から5月20日まで、F1の開発に使用しているサーバを止めた。