東京五輪仕事人BACK NUMBER

パラリンピック支援の2つの目標。
パラサポ・金子知史が目指すこと。 

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

PROFILE

photograph byShinya Kizaki

posted2020/01/26 08:00

パラリンピック支援の2つの目標。パラサポ・金子知史が目指すこと。<Number Web> photograph by Shinya Kizaki

金子知史さん。

【パラスポーツ・サポート】
パラリンピック競技団体の支援や普及活動は、東京2020を契機に大きく進展することが期待される。日本財団が2015年に立ち上げた「パラサポ」は、これまで支援の手が届かなかった部分を支えている。

 パラリンピックはオリンピックに比べて、認知が進んでいないのが現状だ。それゆえに2020年東京パラリンピック成功には、様々な形でのサポートが不可欠になる。

 ボートレースの売上金をもとに活動する日本財団が、そこに名乗りを上げた。'15年5月に「日本財団パラリンピックサポートセンター」(パラサポ)を設立。金子知史は推進戦略部ディレクターとして、その中心的な役割を担っている。

「日本財団はかねてから福祉の分野に取り組み、累計約4万台の福祉車両を国内に配備しています。東京パラリンピック招致が決まったときに何か貢献できることはないかと考え、日本財団は2015年度から2021年度までの期間で100億円を拠出することを決めたんです」

 パラサポの特徴は、従来の支援の手が届かなかった部分をサポートしていることだ。競技の強化そのものは、日本障がい者スポーツ協会日本パラリンピック委員会によって行われている。いわゆる強化費の主な財源は、スポーツ庁の交付金だ。一方、パラサポは別の角度からアプローチしている。

「私たちの目標は2つあります。1つ目はパラスポーツを活用した共生社会実現への貢献。簡単に言えば普及活動で、たとえば企業や学校向けの体験イベントをやっています。2つ目はパラリンピック競技団体の運営支援。以前は役員の方の自宅が事務所代わりで、専従のスタッフもいない団体が多い状況でした。ガバナンス的にも早急に改善する必要がありました」

 日本財団ビルの4階にパラリンピック競技団体との共同オフィスを設け、現在、29団体がそこに事務所を設けている。

「メリットはバックオフィスの機能を共有できること。我々のスタッフが各団体の事務作業を手伝っています。そして何より、横のつながりができるのが大きい。たとえばパラ卓球は身体障害者と知的障害者で団体が分かれているのですが、連携が生まれて初めて合同で国際大会を開催しました。陸上3団体や水泳2団体も連携が密になっています」

選手の気持ちが高まるデザイン。

 オフィスに各団体の関係者がいるので、現場の声も届きやすい。見過ごせなかったのは「施設から使用を断られるパラアスリートがいる」という悩みだった。

「練習場所を確保するのがかなり難しいことがわかった。特に車いす競技は、体育館のフロアが汚れる・傷つくという理由で断られると。そんな中、財団の関連団体が運営する船の科学館の敷地の一部を無料で使えることになった。全国のお手本になるようなパラスポーツ専用の体育館『日本財団パラアリーナ』を作ることを決めました」

 バリアフリーなだけでなくデザインにこだわり、エントランスには香取慎吾が描いたパラサポオフィス内の壁画がレゴで再現されている。

「選手たちの気持ちが高まるようなデザインを目指しました。使用料は無料。おかげさまで95%以上の稼働率を誇り、練習予約がない時間では修学旅行生たちのパラスポーツ体験会なども開催し、海外からの視察も多いです」

 活動の大きな盛り上がりとなりそうなのが、東京パラリンピックの閉会式だ。

「『I'm POSSIBLE』という国際パラリンピック委員会公認の教材があり、それを活用して共生社会作りに寄与した学校2校が閉会式で表彰される。リバースエデュケーションと言って、子供の意識が変わると大人も変わる。ロンドン大会の成功は子供の教育にあったと言われる。我々も事務局の一員としてそれを目指しています」

 パラサポは時限組織で2021年度に解散する予定だ。「各団体が自立できるようにスポンサー獲得を支援するなど準備を進めています」。金子たちの活動は東京大会の大きなレガシーの1つになるはずだ。

金子知史かねこともふみ

1985年7月13日、神奈川県生まれ。法政二高時代はアメフト部に所属。法政大卒業後、2008年に社会貢献に惹かれて日本財団に入会。総務グループを経て、東日本大震災時には災害復興支援事業に従事、現場に赴き自らスコップを握ってボランティアを指揮した。2015年6月に日本財団パラリンピックサポートセンターに出向。パラ競技団体の運営支援や教育事業などを担当。コンプライアンスの重要性を訴えるため、スポーツ現場のパワハラやセクハラを扱った漫画を制作し、大きな反響を呼んだ。

桜の告白。ラグビー日本代表冒険記2019

Sports Graphic Number 993・994

桜の告白。
ラグビー日本代表冒険記2019

 

関連記事

金子知史
東京パラリンピック
オリンピック・パラリンピック

他競技の前後の記事

ページトップ