熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER

日本人に合うラグビーのフェアさと、
南米在住サッカー記者の深い羨望。 

text by

沢田啓明

沢田啓明Hiroaki Sawada

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photograph byNaoya Sanuki

posted2019/10/17 20:00

日本人に合うラグビーのフェアさと、南米在住サッカー記者の深い羨望。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

激しくぶつかり合った選手たちがノーサイドとなれば握手をかわす。ラグビーの精神性には、同じ“フットボール”のサッカーも学ぶところがある。

フットボール文化への戸惑い。

 一方、日本のフットボールのサポーターやファンは世界のフットボール文化の邪悪な側面に戸惑っているように見える。

 日本へ一時帰国した際にJリーグの試合を観戦すると、彼らも世界のフットボール文化に倣って審判や相手選手に罵声やブーイングを浴びせるのだが、それはたいてい控えめで、少々不自然に映る。

 南米のサポーターがひいきチームの前に立ちはだかる者すべてを心底憎み、地鳴りのようなブーイングを浴びせるときに醸し出す正真正銘の殺気を感じることはない。

「ラグビーは紳士がやる野蛮なスポーツで、フットボールは野蛮人がやる紳士的なスポーツ」と言われる。欧州では、ラグビーは主としてインテリが愛好し、フットボールは大衆のスポーツと見なされる傾向が今も残る。

 武士道の伝統があり、幼い頃から他者に敬意を持つことを叩き込まれている日本人のメンタリティーは、本質的にフットボールの文化の悪しき部分を受け付けないのではないか。

 さらに言えば、審判や相手選手への敬意がより深いラグビーの文化の方に、より共感できるのではないか。

熱狂の源は勝利だけではない。

 今回のラグビーW杯で、日本人はただ単に日本代表が勝ち進んでいるから熱狂しているわけではあるまい。

 6カ国の出身地を持つ選手たちが完璧に融合し、一致団結して巨大な力を発揮する「ワンチーム」の一体感に涙を流し、深い感動を覚えているのではないか。のみならず、ラグビーの哲学、文化に魅了されているのだろう。

 だからこそ、国中が「ワンチーム」となって日本代表を熱くサポートし、そのことが「ワンチーム」の「ビクトリーロード」を下支えしているのではないか。

 ラグビー日本代表は、1987年にW杯が創設されてから2011年大会までの5大会の通算成績は1勝2分21敗と惨憺たるものだった。しかし、2015年大会が3勝1敗で、今大会がここまで4戦全勝。短期間にここまで世界トップレベルに伍するほど急成長し、これほど急速に人気が高まった競技は日本スポーツ史上あるまい。

 その一方で、ラグビー日本代表の奮闘に感動する中で、フットボール文化の歪みや醜さに今さらながらに気付き、顔をしかめている人もいるのではないか。

【次ページ】 ラグビーから多くのことを学んで。

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