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佐々木朗希から考える「年間日程」。
センバツがエース依存の根本原因?
posted2019/08/01 17:30
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
Asami Enomoto
もはや、甲子園は1つに絞るべきなのではないだろうか。
夏の甲子園切符をかけた戦いが終了した。
49代表をめぐる争いは今年も熾烈で、白熱した試合が繰り広げられた。決勝戦に接戦が多く、4地区の決勝すべてが延長戦にもつれこんだ日もあった。
そうした熱戦の一方で危惧されるのが、投手の健康問題だ。
この地区大会中、もっとも話題をさらったのは岩手県大会の決勝、花巻東対大船渡だ。甲子園をかけた大一番で、大船渡はドラフト1位確実と言われる注目のエース・佐々木朗希を登板させなかった。準決勝戦で130球を投げて完封していたとはいえ、高校野球の感覚で言えば連投となりそうなものだが、佐々木は登板しなかった。エースを使わずに敗れたことで、話題となった。
エースの登板を回避して敗れたのだから賛否両論の反応は当然ともいえるが、こうした問題は絶対的なエースを抱えるチームが必ず直面するものだ。
大船渡は、4回戦で盛岡四と延長12回の死闘を演じている。
先発した佐々木はこの試合で完投し、194球を投じた。大会の日程を考えれば、そのあとの試合で多く投げさせることができないのは明らかだった。
おのずと2番手以降の投手で戦っていくわけだが、ここで難しいのは、夏の大会を迎えるまでの過程でその状況の準備機会が少ないことだ。それは単純に投手のマウンド経験が不足しているだけでなく、チーム全体が2番手投手をマウンドに置いた状況で戦った経験が少ないのだ。
エースで戦う、以外の形を。
昨年の夏、吉田輝星(日本ハム)の起用にこだわった金足農業の関係者がこう語っていた。
「勝つために吉田を登板させたいということではないんです。自分たちの今まで戦ってきた形で勝負に挑みたい。その結果として吉田1人の登板になっているだけなんです」
チームの「戦う形」をエースに頼り切りにしていると、エース以外がマウンドに立った時に不安感が膨らんでしまうのだ。