野球善哉BACK NUMBER
佐々木朗希から考える「年間日程」。
センバツがエース依存の根本原因?
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byAsami Enomoto
posted2019/08/01 17:30
夏の甲子園や予選の問題には、結局のところ高校野球というシステム全体の問題が凝縮されているということなのだ。
高校野球の年間スケジュールに問題がある。
大船渡は、岩手県大会決勝戦で4つのエラーを喫している。これも、そうした “いつもとの空気の違い”の影響であるとも言える。試合開始からチーム全体が不安を感じ、エースではない投手が頑張って投げているのを支えようとして逆にバックが慎重になったり、力んだりする。チーム全体の経験値が、パフォーマンスを大きく左右してしまうのである。
過去に何度も書いているが、現行の高校野球の年間スケジュールは詰まりすぎている。夏が終わり新チームが結成されてすぐにセンバツ切符をかけた一発勝負の戦いが始まるため、エース以外の投手を試したり育てたりという機会が極めてすくない。
エース不在を含めてあらゆる状況を経験することでチームは成熟していくのだが、秋の大会から「負けたら終わり」の戦いを強いられるので、どうしてもメンバーや戦い方で新たなチャレンジができなくなってしまうのだ。
ダルビッシュの予選前倒し案を考えていくと。
先日、カブスのダルビッシュ有投手が「春の地方大会をやめて、夏の県大会予選を5月からやればいい」とSNSに投稿した。彼の提案が魅力的に聞こえるのは、高校野球全体のスケジュールがあらゆる面で足かせになっているからだ。
実は以前、夏の大会の2段階開催案をシミュレーションしたことがある。
例えばダルビッシュ投手が言うように、5月ないし6月頭から夏の大会を始めたとする。そうした場合にどういう影響があるかを考えたのだ。
簡単にいうと、今ある高校野球の年間スケジュールを全て前倒しする必要があるという結論に行き着いた。
現在のスケジュールだと、5月は春の関東大会などの地方大会が開催されている地域が多い。この時期に夏の大会を始めるとなると、現行の地方大会自体をもっと前にする必要があり、その予選は3、4月の大会日程にも影響が出てくることになる。
必然的に、センバツ大会をどうするかという話にならざるをえない。