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“アライバ”のDNAを継ぐ25歳。
与田監督が光らせる溝脇隼人の才。 

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小西斗真

小西斗真Toma Konishi

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photograph byKyodo News

posted2019/05/23 08:00

“アライバ”のDNAを継ぐ25歳。与田監督が光らせる溝脇隼人の才。<Number Web> photograph by Kyodo News

5月19日巨人戦(ナゴヤドーム)で相手先発の山口から三塁打を放つ溝脇。プロ7年目で初めて、大きなチャンスをむかえている。

昨季は一軍出場ゼロの溝脇。

 先に挙げた8人の中で、今回は溝脇について取り上げたい。大谷翔平と同学年の25歳。熊本の九州学院から中日にドラフト5位で指名され入団した7年目。今季ブレーク中のヤクルト・村上宗隆は後輩ということになる。ここまでの6年間はといえば、通算で22打数2安打。打率は1割にも満たず、昨シーズンは一軍からお呼びがかからなかったのも無理からぬ話だった。

 ところが、その溝脇が昇格を果たした上に、先発出場の大チャンスを与えられたのが誕生日2日後の5月19日、巨人戦(ナゴヤドーム)のことだった。「1番・二塁」として2点を追う1回に、いきなりライトフェンス直撃の三塁打で反撃の口火を切る。5、6回にもレフト前に運び、8回は四球を選んだ。3安打、4出塁、3得点。辛くも1点差で逃げ切った試合だから、溝脇の活躍がどれだけ貢献したか伝わるだろう。

「1打席目にかけていました。この試合で打てなかったらファームだと。それくらいの気持ちでいきました」

「やれる選手だと思っていた」(荒木コーチ)

 6年で2安打の男が、1試合で3安打。それを先発で起用する与田監督の思い切りも大したものだ。なぜ溝脇は二軍でくすぶっていたのか。なぜ今シーズンは出番があるのか。その秘密の一端は「1番・二塁」という打順と守備位置に隠されている。

「走塁の勘、野球の勘というものは最初から持っていましたよ。非常にセンスがある選手だし、僕の中では今年に限らず、毎年やれる選手だと思っていました。ただ、それゆえにほんの少し、横着なプレーが出てしまうことがありました」

 今シーズンから指導者として新たな野球人生を歩んでいる荒木雅博コーチは、溝脇という選手をこう表現した。

 野球センスあふれる俊足、巧打の肥後もっこす。右打ちか左打ちかということ以外は、まんま「荒木雅博」なのだ。つまり、偉大なる荒木という存在そのものが、溝脇の前に立ちふさがる壁だった。実際、昨シーズンまでならレギュラーの二塁手は高橋周平だったが、その控えには荒木や亀沢恭平がいた。その時点で内野の枠はほぼ埋まっていたのである。

【次ページ】 「溝脇と二遊間を組んでから引退したい」

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