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<徹底解剖・ドルトムント新監督>
トーマス・トゥヘル「ペップのコピーか? 新時代の旗手か?」
text by

ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byItaru Chiba
posted2015/10/01 06:00

昨季7位に沈んだチームの再建を託された新監督。連勝スタートを決め、開幕から好調を維持するが、新監督はチームをどこに導こうとしているのか。その「科学的アプローチ」と人心掌握術に迫る。
「食事会場はどこですか?」
ヨーロッパリーグ(EL)のアウェーゲームの際、選手たちがたどたどしい英語で警備員にたずねる姿が当たり前になりつつある。トゥヘル新監督がチームにもたらそうとしているものを象徴するシーンだ。
ピッチ外で、トゥヘルが取り組んできたのが、怪我の予防と疲労の回復、メンタル面のケアを徹底することだった。
まず、試合後1時間以内の食事を選手たちに義務づけた。ホームゲームではもちろん、アウェーでも可能な限り、すぐに食事をとれる場所を確保してきた。アナボリックウインドウの理論に基づき、試合後1時間以内にプロテインや炭水化物を摂ることで試合で傷ついた筋肉の回復率を一定以上に引き上げられるからだ。7月のアジアツアーから、コックも帯同させている。
メニューだけでなく、食材にもこだわる。パスタ一つとっても、血糖値の上昇が抑えられる、小麦色の全粒粉で出来たものを提供しているし、ほとんどの食材は「BIO」と呼ばれる有機農法で作られたものだ。
その一方で、選手がリラックスする時間を作る工夫も怠らない。
サッカー界では、多くのチームが、ホーム、アウェーに関係なく、試合前日にホテルに泊まる。アウェーでのナイトゲーム後に現地のホテルに泊まることも少なくない。ドルトムントは年内に最大で30試合を戦う予定があるため、以前のやり方を踏襲するとホテルに40泊近くする計算になる。