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ウッズの優勝はすべての人の記憶に。
5年分の期待と歓喜が詰まった1日。

posted2018/09/26 12:00

 
ウッズの優勝はすべての人の記憶に。5年分の期待と歓喜が詰まった1日。<Number Web> photograph by Getty Images

タイガー・ウッズの優勝を多くの人が間近で見届けた。もはや幻想的な光景だった。

text by

舩越園子

舩越園子Sonoko Funakoshi

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Getty Images

 米ツアーの今季最終戦となったツアー選手権最終日。戦いの舞台イーストレイクには、タイガー・ウッズ復活優勝に期待を膨らませる大勢の人々が、所狭しとひしめいていた。

 私は1番のティグラウンド脇に先回りして、あと15分ほどでスタート予定のタイガー・ウッズを待っていた。そうやって先へ先へと動いておかないと大観衆の波に飲み込まれてしまうからだ。

 しばらくすると、遠くからざわめきが聞こえ、「ゴー! タイガー!」「タイガー!」というたくさんの叫び声がやや近づいてきて、そしてピタリと鳴り止んだ。

 それは、1番ティから見てずっと左奥に位置しているドライビングレンジから、やや左手の練習グリーンへとウッズが移動してきたことを意味していた。

 さらに5、6分後。「タイガー!」「タイガー!」「勝ってくれよ。タイガー!」。悲鳴のような怒声のようなたくさんの呼び声が練習グリーン周辺から1番ティ後方のギャラリースタンドの背後を通り抜けていった。

 ああ、ウッズが歩いているな。今、1番ティに向かっているな。ウッズの姿が見えずとも、彼の居場所は手に取るようにわかった。

 1番ティにウッズが登場した瞬間、ギャラリースタンドからもその周辺からも大きな拍手と歓声がわき起こり、大地を通じて振動さえ感じ取れた。

これこそがタイガーだ。

 これだよ、これ――。そう、これこそが、勝利を目指す我らがタイガー・ウッズを迎えるサンデーアフタヌーンのスタート風景だ。

 それまでウッズが挙げてきたメジャー14勝を含む通算79勝の大半を、ゴルフジャーナリストの立場としてこの目で目撃してきた私にとって、それはかつては見慣れた風景だった。そして、この5年間は見ることができなかった風景でもあった。

 ウッズのデビューから20余年、感動や感銘を受けながら味わい続けてきたウッズ・フィーバーの独特の緊張感やスリルは、どうやら私の体の中に刻み込まれていたようで、この日この瞬間に、かつてのメモリーが体の底からポップアップして動き出したような、そんな感覚を覚えた。

【次ページ】 ウッズの優勝争いを初めて見た世代も。

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