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目指すのは「日本一、影響力あるランナー」。
元青学大・下田裕太の目指す先。
text by
別府響(文藝春秋)Hibiki Beppu
photograph byAsami Enomoto
posted2018/06/04 11:00
陸上界の発展にという思いを抱き、青学大卒業後、まずは今季8月の北海道マラソンにチャレンジしてMGCの権利獲得を狙っている。
原監督から授けられたノウハウ。
いまでこそ学生ランナーたちのマラソン挑戦は珍しくなくなったが、そのきっかけはこの年の下田たち青学大勢の東京マラソン参加だった。両立が難しいとされる駅伝と並行してマラソンでも結果を残した下田にも、当然多くのメディアが注目した。
「実際あの時はマラソン練習もほとんどしていなかったんです。原(晋)監督からは『箱根駅伝で区間賞を獲れる選手なら30kmまでは行けるはず』と言われていて。そういう中だったので『1年間ちゃんとマラソン練習をしたら、自分はもっといけるんじゃないか』という自信にもなりました。
原監督からは本当にいろんなノウハウを教えてもらったと思います。高校時代の自分では考えられないようなレベルまで引き上げてくれた。いろいろなトレーニングの方法もそうですし、意識の部分もそうです。だからこそ、いまの陸上界にはもったいない部分があるなと感じることもあるんです」
「日本で一番影響力のあるランナー」に。
その「もったいなさ」こそが下田が目指す“理想のランナー”像につながるのだという。
「これだけのことを、僕よりもっとポテンシャルのある選手やフィジカルの強い選手がやったらもっと強くなるのに、ということを強く感じて。そういうところからもっと陸上界を良くしたいと思ったのがきっかけです。
僕が指導者やトレーナーになるのも面白いとは思ったんですけど、一番は僕自身が影響力のある選手になって色んなことを発信していくこと。それが一番の近道なんじゃないかというのを強く感じていたので、『日本で一番影響力のあるランナー』になりたいんです」
もちろんそれには実績が必要なことは下田自身、百も承知だ。
だからこそ、ここからの自分の走りに問われるものの大きさも理解している。
「まずはMGCの出場権を獲らないことには意味がない。今年1年はそれを狙って全力を尽くしていく予定で、第一候補に8月の北海道マラソンを考えていて。暑いのは得意ですし、福岡や東京でワイルドカードを獲るよりはこっちのほうが確率的にもある。一番、自分らしいかなと思っています。僕は陸上競技をこれから10年以上は続けていきたいなと思っています。だから、下田裕太がどういうランナーとして現役を引退するかというところまで考えて、いま何をやらないといけないのかをよく考えたいと思います」