スポーツに役立つ法律知識~教えてオジオ先生!~BACK NUMBER
クラブ活動って“ブラック”なの?
学校の先生が部活の顧問を断る方法。
text by
小塩康祐Kosuke Ojio
photograph byTamon Matsuzono
posted2017/08/21 08:00
学校教育におけるクラブ活動は、現代生活の多様性についていけていないのかもしれない……。
部活の顧問をしたら残業手当はもらえるの?
このように、原則として公立の教職員は時間外労働をすることはないですが、仮に時間外労働をしたとしても、「教育職員については、時間外勤務手当及び休日勤務手当は、支給しない」(給特法3条2項)とされています。
その代わりに、教職員に対しては、部活の顧問をするか否かにかかわらず、「教職調整額」として、給料月額の「4%」が支給されることになっています(給特法3条1項)。この「4%」の根拠は、法律制定(昭和46年)当時の、時間外労働の平均から時間外手当を算出(調査自体は文部省が昭和41年に行いました)した結果です。
約50年前と現在とでは大きく状況が変わっているにもかかわらず、当時の調査結果を元にした教職調整額が支払われているということが現状です。
裁判で時間外手当を求めたらどうなるの?
それでは、先生が法律で強制されていない部活の顧問をさせられ、しかも教職調整額では不十分なほど時間を使ったとして、時間外手当を支払ってほしいとして裁判をしたらどうなるでしょうか。
現在の裁判所の考え方に基づくと、おそらく負けるでしょう。つまり、時間外手当は支払われません。
理由としては、概要、(1)命令に基づくものではなく、自主的・自発的な活動として部活の顧問をしているから、(2)給特法で既に調整しているから、ということが挙げられると考えられます(名古屋高裁平成14年1月23日等参照)。
自主的・自発的な活動ということや給特法で調整しているということを理由として時間外手当を支払わないということは説得力があると思いませんが、現在の裁判実務ではこのように判断されています。
もっとも、これらの裁判例においても、具体的な職務命令があった場合や、具体的な職務命令がなかったとしても先生の自由意思を強く拘束して時間外勤務が行われることが常態化している場合には、時間外勤務手当の支払いを認めるという余地を残しています。
また、労災認定に関する事例ですが、陸上部への部活指導が「公務」に該当すると判断している裁判例(名古屋地裁平成23年6月29日。同判決は最高裁まで争われましたが、教員側の勝訴で確定しています)も注目されます。