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バド奥原、レスリング文田の世界一。
最大のライバルが国内にいる好循環。
posted2017/09/03 08:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
JMPA
ここ最近行なわれた世界選手権などの国際大会で、いくつもの快挙が生まれた。
レスリングの世界選手権ではグレコローマン59kg級の文田健一郎が優勝した。得意技のそり投げは世界中の選手からマークされ、誰も胸を合わせたがらないほどの切れ味を持つ。警戒される中でも初戦から順調に勝ち上がっての金メダルだった。
グレコローマンはそのルールから、フリースタイル以上に日本が苦しんできた種目で、世界選手権では1983年の江藤正基、オリンピックは1984年ロサンゼルス五輪の宮原厚次以降、優勝者はいなかった。久しぶりのグレコローマンでの王者誕生となった。
さらにバドミントンの世界選手権の女子シングルスでは、奥原希望が世界選手権、オリンピックを通じて日本初の金メダルを獲得した。
準々決勝でリオデジャネイロ五輪金メダルのカロリーナ・マリンを破り、決勝では、リオの準決勝で敗れた銀メダリストのシンドゥ・プサルラを相手に約1時間50分の死闘を繰り広げての優勝だった。
強烈な「ナンバー2」以降の存在が競争を激しくする。
文田、奥原ら、今夏の活躍に共通するのは、強烈な「ナンバー2」が国内にいることだ。いや、ナンバー2のみならず国内の競争が激しいことだ。
グレコローマン59kg級には、リオデジャネイロ五輪で銀メダルを獲得した太田忍がいる。
文田と太田は互いを好敵手としてしのぎを削ってきた。世界のトップを狙うという意欲も互いに強い。文田は「太田さん以外には世界の誰にも負けるわけにはいかない」と言葉にするくらい太田をライバルとして意識し、だから太田以外には勝たなければいけないと強く決意してきた。
奥原の場合はどうか。故障に苦しんでいるさなか、山口茜が台頭し、国内外で活躍を見せた。奥原はその時期を振り返り、こう語っていた。
「日本の女子シングルスの先頭に立って、引っ張る立場でいたいのに、そこにいられないもどかしさがありました」