野ボール横丁BACK NUMBER
二松学舎監督からエースへの労い。
「なんか、無理やりだったかな」
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byHideki Sugiyama
posted2017/08/18 17:00
市原勝人に、高校野球の監督っぽさはない。試合の振り返り方も選手への視線も、やはり独特なものだ。
エースについて「かわいそうなときもあった」。
最後に、チームの急成長の証であるエースの市川を、こうねぎらった。
「彼のことは小学生のときから知ってるんですけど、ガツガツしたところがなくて、勝負の世界には向いてないんじゃないかと思った。でも可能性を感じていたので、厳しいことを言って育てたんです。ただ、かわいそうなとき、いっぱいあった。なんか、無理やりこっちに世界に引っ張ってきちゃったのかな……という気はしますね」
3年前の夏、二松学舎大付は3回戦で沖縄尚学に5-6と逆転負け。試合後、市原は、同点の場面で2ランスクイズをねらった自分を「意地悪なスクイズをしたから、神様にそっぽを向かれちゃったのかな」と責めた。スクイズに意地悪も親切もないのだが……。
市川への言葉は、自分に向けられたもののようにも感じられた。